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エヴァ好きは聴かないと絶対損!エヴァンゲリオン・ジャズ・ナイト

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親愛なる読者諸君!

オタクパパだ!

 

今回は、アニメジャズ入門第7弾だ。

 

この企画は、これまで1000曲以上のアニメ関連のジャズを聴いてきたオタクパパがお勧めのアニメジャズを紹介する

大人のためのアニメジャズ入門だ。

 

今回は、日本人ならもはや知らない者はいないというほどの国民的アニメ

新世紀エヴァンゲリオン

のジャズアルバム

「The world! EVAngelion JAZZ night = The Tokyo III Jaz club =」

(以下、「エヴァンゲリオンJAZZナイト」)を紹介したい。

エヴァンゲリオンJAZZナイトの魅力

安野モヨコによる3人娘を描いたジャケットの鑑賞会

Amazonリンク The world!EVAngelion JAZZ night=The Tokyo III Jazz club

さて、上のジャケットを見てほしい。

これは、「エヴァンゲリオン」(以下、「エヴァ」)の監督・庵野秀明の奥さんである、

安野モヨコ氏による描き下ろしジャケットだ。

 

黒い衣装に身をつつんだ3人の少女達がマイクをもって歌うイラストが実に素晴らしい。

 

ところで、エヴァの3人娘といえば、

綾波レイ

惣流・アスカ・ラングレー

真希波・マリ・イラストリアス

の3人を思い浮かべるが、上のイラストでは、真ん中がレイ、右側がアスカ、左側がマキという感じだろうか?

 

それはともかく、エヴァオタクとして、真ん中の綾波レイ似のショートカットの少女

絶対領域何人にも侵されざる聖なる領域

っぽい領域(*注1)が垣間見える黒タイツが、実に芸術的だ!

 

何よりも、太ももをタテに走る黒い筋がたまらない!(←おい)

(*注1)絶対領域とは
「絶対領域」とは、その名のとおり、我々オタク紳士にとって、絶対的な領域であり、うやうやしく崇め奉られている萌え要素の1つだ。

もともとは、「新世紀エヴァンゲリオン」に登場するA.T.フィールドの和訳の一つとして登場したが、オタク世界では、ミニスカートとニーソックスの間の太ももの露出した部分のことを差す言葉だ。

そのわずかに覗く素肌が大きな魅力であり、太ももフェチにとっては、この上なくたまらない萌え要素といえるだろう。

それゆえ、まさに、
チラリズムの完成形ともいえる。

だが、ただ単に太ももが露出していればいいというわけではなく、モンドセレクション最高金賞の1,000,000倍以上ものシビアな基準がある。

その基準とは、
「ミニスカートの丈:絶対領域:ニーソックスの膝上部分」の比率

4:1:2.5

であることが理想(黄金比率)とされており、しかも、
誤差の許容範囲±25%という点だ!

な、なんだってーーーっ!

この比率がきちんとしていないものは、絶対領域とは呼ばれない。

ちなみに、電子の歌姫にしてオタクのアイドル・初音ミクは、この基準を完全にクリアしているのはいうまでもない。

それゆえ、安野モヨコの描く上の少女達は、「生肌+黄金比率」という最低限の基準を満たしていない点で、厳密には、絶対領域とはいえない。

というわけで、安野モヨコ先生に一言。

オタク修行が足りんっ

 

ちなみに、安野モヨコ氏と庵野秀明とのラブラブ?のオタク夫婦ライフを描いた「監督不行届」は、オタクの実態を知る貴重な資料といえ、一読の価値ありだ。

 

作曲家・鷺巣詩郎の素顔に迫る

Amazonリンク 鷺巣詩郎 執筆録 其の1 および、壮絶なる移動、仕事年表

鷺巣詩郎は、1957年東京生まれだ。

1960年生まれの庵野秀明より3歳年上だが、ほぼ同じ世代といえるだろう。

 

鷲巣詩郎の父は、漫画家にしてアニメーターでもあり、特撮・映像作品のプロデューサーにして演出家でもある多彩な経歴をもつ、うしおそうじ(鷺巣富雄)だ。

 

うしおそうじは、漫画の神様・手塚治虫もファンだったというほどの日本漫画界の草分けともいえる人物だった。

 

実際、鷺巣詩郎自身も3〜4歳の頃から父親の膝の上で、その仕事っぷりを目の当たりにして育ってきたため、子供の頃から父親と同じ道を進むものと思っていたそうだ。

 

だが、彼は父親と違って、音楽の道を進むことになった。

 

少年時代の鷲巣詩郎が音楽に情熱をもつきっかけとなったのは、5歳のときに、近所のカトリック系教会でピアノとヴァイオリンを習ったことがきっかけだったそうだ。

 

鷲巣詩郎の音楽には、宗教的な神々しさが感じられる壮大な曲が多いが、カトリック系教会で音楽に目覚めたことが、理由の1つかもしれない。

だがなぜ、エヴァンゲリオンでジャズなのか?

一見、エヴァとジャズとは全く接点がないように思える。

 

だが、少年時代の鷺巣詩郎は、すでに小学5年生の頃には、ジャズの帝王・マイルス・デイヴィスに夢中になっていたそうだ。

 

そのため、中学生の頃には、独学でジャズのアレンジを熱心に勉強するようになったそうだ。

鷺巣詩郎はいう。

「中1の時、高等部の2年に渡辺香津美さんがいたんですが、彼の演奏を見て、自分が演奏家として身を立てるのは無理だと思った。そこで、作曲や編曲をやろうと思いたち、放課後はほとんど毎日、銀座や渋谷のヤマハに行って、楽典の本やジャズの楽譜などをずっと立ち読みしていたんです」

引用 「TOWER RECORDS ONLINE」

鷺巣詩郎インタビュー

当時、鷺巣詩郎が入学した暁星(ぎょうせい)中学校・高等学校には、その卓越したギター・テクニックで「17歳の天才ギタリストの出現」と騒がれた渡辺香津美(かずみ)がいた。

 

渡辺香津美もジャズに興味を持ち、ヤマハ音楽教室でジャズ・ギタリストの中牟礼 貞則(なかむれ さだのり)からギターを学ぶ。

 

また、鷺巣詩郎はその後、ジャズ・ピアニストの佐藤允彦(まさひこ)からアレンジの手ほどきを受けている。

 

佐藤允彦は、慶応大学在学中に、「ルパン三世」の曲で有名な大野雄二や、「海のトリトン」の作曲で知られる鈴木宏昌(ひろまさ)とともに、慶應三羽烏として名を馳せたことで知られる天才ジャズ・ピアニストだ。

 

このような経歴からもわかるように、鷲巣詩郎の生い立ちには、ジャズとは切っても切れない縁があり、ある意味、エヴァンゲリオンのジャズアレンジは必然ともいえるのだ。

参考

シネマトゥデイ
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エヴァンゲリオンJAZZナイトの各曲レビュー

それでは早速、エヴァンゲリオンJAZZナイトの各曲レビューをおこなおう。

【第1曲】WELCOME TO THE TOKYO III JAZZ CLUB

(↓)天才・鷺巣詩郎による壮大なエヴァの音楽世界はこのアルバムから始まった!

Amazonリンク NEON GENESIS EVANGELION

第1曲目は「WELCOME TO THE TOKYO III JAZZ CLUB」。

 

驚くべきことに、第1曲のベースとなった原曲は、「次回予告」のBGMだ。

もちろん、原曲の曲名は「次回予告」(震え声)

 

ちなみに、私は、予告編まで何度も繰り返して見たクチなので、この曲を聴くと、ミサトさんの

サービス、サービスぅ!

というセリフが自動で脳内再生されてしまう呪いにかかってしまっているほどだ(←おい)。

 

それはともかく、あの長くて30秒ほどしかない次回予告が、なんと6分35秒もの大作にジャズ・アレンジされているのだ!!

 

13倍以上もの長さにアレンジするのも凄いが、えらく豪華なビッグバンドにジャズ・アレンジされているのだ。

 

ビッグバンドとオーケストラの編曲は、ジャズ作曲家・編曲家の挟間美帆(はざま みほ)による。

 

挟間美帆は、2014年に第24回出光音楽賞を受賞し、2016年に米ダウンビート誌の「未来を担う25人のジャズアーティスト」にアジア人でただ一人選出されるほど、高い評価を得た日本ジャズ界の逸材だ。

Amazonリンク ジャーニー・トゥ・ジャーニー

鷺巣詩郎による解説では、「日本ジャズ史上初めて『出光賞』を受賞した。」とあるが、その19年前の第5回(1994年年度)には、ジャズ・ピアニストの大西順子が、第14回(2003年度)には、同じくジャズ・ピアニストの松永貴志が「出光音楽賞」に受賞しているので、彼女が「日本ジャズ史上初」ということではないようだ。

参考

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だが、あの30秒程度しかない「次回予告」を、これだけ豪華で聴きごたえのある大編成のビッグバンドジャズに編曲した彼女の力量は半端ではないだろう。

 

さすがに、鷺巣詩郎が

100年に一人の逸材

と評価するだけのことはある。

 

しかも、この曲、よく聴くと、エヴァのOPテーマ「残酷な天使のテーゼ」を歌った高橋洋子が舞台裏で歌っているのだ!

Amazonリンク 残酷な天使のテーゼ

それゆえ、まさしく贅沢極まりないオープニング曲といえるだろう。

 

私自身、まさか「次回予告」の曲にこれほどハマる日が来るとは想像さえしていなかった。

 

そういう意味で、この曲を聴く価値は十分にあるといえるだろう。

【第2曲】SWINGING A1

第2曲目は「SWINGING A1」

 

原曲は「REI 1」。

TV版では、包帯が巻かれた綾波レイの痛々しいシーンで流れる曲だ。

 

だが、「エヴァジャズ」では、原曲のような悲壮感はなく、昔懐かしのビッグバンドのスウィングジャズを思わせる、ホーンセクションの派手な作品に仕上がっている。

 

また、中盤のベースのビンビン響くビートに乗って、流れるような伊東たけしのアルト・サックスのソロ演奏も実に素晴らしい。

 

特に、ラストで

必殺仕事人のテーマ曲

を連想させるエリック宮城(みやしろ)のトランペット・ソロがあまりにもカッコ良すぎる1曲だ。

【第3曲】COME SWEET DEATH, SECOND IMPACT

第3曲目は「COME SWEET DEATH, SECOND IMPACT」だ。

 

この曲のもとになった原曲は、1997年7月19日に公開された『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』の劇中挿入歌「Komm, süsser Tod〜甘き死よ、来たれ」

 

タイトルがドイツ語だが、これはJ.S.バッハの教会カンタータ、『来たれ、汝甘き死の時よ』(Komm, du süße Todesstunde)が元になっているためだ。

 

原曲のヴォーカルは、アリアンヌ・クレオパトラ・シュライバー(Arianne Cleopatra Schreiber)が担当した。

 

Wikipediaでは、彼女が

イギリス生まれ南アフリカ育ちのシンガーソングライター

とある。

参考

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だが、海外のエヴァオタクのフォーラムの情報によると、アリアンヌは、南アフリカ生まれの南アフリカ人であり、ヨハネスブルグの高校に通い、19歳で英国に移住し、現在では、オーストラリアのニューサウスウェールズに住んでいるそうだ。

参考

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Arianne Schreiber is a South African - EvaGeeks.org Forum - an Evangelion Fan Community For discussion of and submissions for the EvaGeeks Wiki and Commentary. Open to all posters.,Arianne Schreiber is a South African, discussion of neon genesis ev...

この情報は、海外ウェブサイト「starnow」の情報とも合致しているので、おそらく海外エヴァオタクの情報のほうが、日本のWikipediaの情報よりも正確だろう。

参考

https://www.starnow.com.au/arianneschreiber

(↓)海外ウェブサイト「starnow」に掲載されたアリアンヌの写真。真紅の髪の色に一瞬、

「灼眼のシ●ナ」のコスプレ

と思ってしまったのは内緒だ。

引用 「starnow」Arianne Schreiber

ちなみに、原曲のテーマはただ一つ、

無へと還ろう

(It all returns to nothing)

だ。

 

原曲は、青春を彷彿とさせる懐かしい旋律のピアノのメロディで始まる爽やかな曲だが、その歌詞の内容は、

作詞:釈迦

といっても、全く違和感がないほど、宗教的な示唆に富んだ深い内容なのだ。

(ちなみに、この歌詞は、庵野監督自らが作詞したそうだ)。

 

しかも、中盤からは、バックコーラスでなぜか拍手喝采なのだ!!

 

そう、旧作のエヴァをリアルタイムで見ていた私のような世代にとっては、

おめでとう!

おめでとう!

(パチパチパチ)

という、黒歴史的なトラウマを思い起こさせる作りといえるだろう。

 

(↓)旧作のエヴァのラストをリアルタイムで見た当時のエヴァファンの姿

まさしく、それまで積み上げてきた展開がすべて無へと還ったのだ。

(新劇場版の「Q」でもその傾向がある)

 

さて、この原曲のジャズアレンジを「綾波レイ」を演じる声優・林原めぐみが日本語で歌う。

Amazonリンク 林原めぐみ BESTアルバム VINTAGE White

ジャズアレンジは、大河ドラマやコーエーの「三国志」を思わせるような重厚なオーケストラから始まるが、その後、アコースティッ・ギターの爽やかなボサノヴァ風の旋律が続き、そこに林原めぐみのヴォーカルが重なる。

 

私自身、林原めぐみの楽曲は久しぶりに聴いたが、その歌唱力は全然衰えていないことにまず驚いた。

 

ジャズ・ボサノヴァ風の爽やかな曲にのって、綾波レイの声で、

「さあ!(無へと)

 還りましょう!」

などと言われたら、ヤバすぎるだろ!!

 

というわけで、この曲は、何もかも嫌になって、

人生に疲れたときに聴くと癒やされること間違いなしの曲といえるだろう(←おい)。

 

まさしく、庵野監督の末法的なセンスが光る歌詞を存分に堪能できる一曲だ。

【第4曲】BAREFOOT IN THE CLUB

第4曲目は、「BAREFOOT IN THE CLUB」。

 

一方、原曲のタイトルは、「BAREFOOT IN THE PARK」。

PARK(公園)がCLUB(クラブ)になっただけだが、ジャズアレンジのほうも、基本は原曲と同じ曲調だ。

 

序盤では、爽やかな朝の目覚めを思わせるようなストリングスから始まり、ギターとホーンによるおなじみの曲が演奏される。

 

どちらかというと、完全なジャズというより、クラシックとジャズがクロスオーバーしたような上品な感じに仕上がっている。

 

特に、中川英二郎によるトロンボーン・ソロの伸び伸びとした演奏が原曲のゆったりした雰囲気に見事にマッチングしており、聴くだけで不思議と癒やされる。

 

トロンボーン奏者の中川英二郎は、5歳でトロンボーンを始め、高校在学中の16歳に初のリーダーアルバムをニューヨークで録音して発表する。また、2007年、日本人として初めて米「トニー賞」授賞式に出演したという逸材だ。

 

また、中盤の圧倒的なホーンの重厚なサウンドと、ラストの締めくくりもいかにもビッグバンドジャズらしい。

 

クラシックなストリングスで始まり、ボサノヴァ風の軽快なリズムが続き、最後にビッグバンド風に締めくくる多彩な演出は、聞き飽きることがない。

 

クラシックとジャズとボサノヴァが融合した名アレンジ曲といえるだろう。

【第5曲】A MEDLEY: MILESTONES~THE FINAL DECISION WE ALL MUST TAKE

 Amazonリンク MILESTONES

第5曲目はメドレーだ。

 

最初は、「Milestones」から始まる。

モダン・ジャズの帝王マイルス・デイヴィスの代表曲の1つだ。

 

マイルスの「Milestones」は、マイルス(トランペット)とコルトレーン(テナー・サックス)とキャノンボール(アルト・サックス)の3管編成による歯切れのいいスタッカートから始まる渋い一曲だ。

 

一方、鷺巣詩郎の「Milestone」は、流れるようなベースに乗って、歯切れのいいピアノの旋律が始まり、そこにテナー・サックスの演奏が重なるテンポのいい曲だ。

一見、正統的なジャズ曲に聞こえる。

 

だが、面白いのは、「Milestone」をベースに「エヴァンゲリオン新劇場版:破」の「The Final Decision We All Must Take」の旋律が違和感なく融合している点だ。

 

「The Final Decision We All Must Take」は、弐号機のザ・ビーストが発動する際に使われる壮大な曲だ。

 

中盤までのサックスソロに続く、情熱的なピアノソロの応酬がまた素晴らしい。

 

一見、「Milestones」と思わせておいて、

いつの間にかエヴァンゲリオンになっていたという不思議な曲だ。

【第6曲】EMPTINESS, INTERLUDE

第6曲目は「EMPTINESS, INTERLUDE」

 

原曲は、End of Evangelionの「空しき流れ」

アスカが操る弐号機がエヴァシリーズに喰われる際に流れるトラウマ曲だ。

 

ジャズ・アレンジでは、重厚なストリングスを背景に、内省的なテナー・サックスのソロが延々と続く。

テナー・サックスを演奏するのは、サックス奏者の小池修だ。

 

小池修は10歳からサックスを始め、参加アルバムは4000枚を超えるという大ベテランだ。

 

アスカの絶望感と空しい感情をサックス・ソロで表現した技量は見事というほかないだろう。

【第7曲】EMPTINESS, THE LONGEST

第7曲目は「EMPTINESS, THE LONGEST」

 

こちらも原曲は「空しき流れ」

やはり重厚なストリングスを背景に、サックスが哀愁ただようメロディを奏でていく。

 

中盤からは、少しテンポが早くなり、軽快なリズムに変わる。

孤独なサックスが延々と続くソロパートも素晴らしいが、バックのストリングスの厚みのある演奏が盛り上げるさまも見事だ。

 

グラスを傾けながら、じっくりと落ち着いて聴きたい曲に仕上がっているといえるだろう。

【第8曲】DILEMMATIC TRIANGLE OPERA

第8曲目は、オペラの序曲のような重厚な男女のコーラスから始まる印象的な曲だ。

その後、林原めぐみのゆっくりと優しく語りかけるような甘いヴォーカルが続く。

 

原曲は「Hedgehog’s Dilemma」(ヤマアラシのジレンマ)だ。

その名のとおり、身を寄せれば寄せるほど身体中のトゲでお互いを傷つけてしまう、シンジの臆病な感情を歌にした曲といえるだろう。

 

だが、なぜ「TRIANGE(三角)」なのか?

 

鷺巣詩郎によれば、

シンジ、レイ、アスカの三角関係

ということらしい。

 

この曲は、林原めぐみの消えゆくようにはかない歌声が、哀愁漂うアコースティック・ギターの音色と、オペラ風のバックコーラスと見事に調和して、しっとりと落ち着いた感じの曲に仕上がっており、聞き終わった後、なんともいえない静かな余韻に浸ることが出来るだろう。

【第9曲】A9, MELLOW SLOW-JAM

第9曲目は「A9, MELLOW SLOW-JAM」だ。

 

ちなみに、「JAM」とは、

ジャズの演奏の即興的な演奏

を意味する言葉だ。

 

英語では、交通渋滞を「traffic jam」というが、英語のジャムには、「混雑、雑踏、混み合い」という意味がある。

 

1940年代頃、ニューヨークなどのクラブでは、閉店後に集まったメンバーが、くつろいだ気分で即興で自由な演奏を楽しんでいた。

 

ジャズを題材にした少女漫画「坂道のアポロン」で、主人公が初めて出会った相手とレコード店の地下室で即興的なセッションを行うシーンがあるが、このようなセッションが、ジャム・セッションだ。

 

商業向けの決まったメンバーではなく、その場で適当に集まったごちゃまぜのメンバーで演奏するセッションだから、「ジャム・セッション」(ごちゃまぜのセッション)というわけだ。

それゆえ、「SLOW-JAM」は、

「ゆったりとした即興的で自由な演奏」

のような意味だと考えてもいいだろう。

 

実際、「MELLOW SLOW-JAM」は、情熱的で美しいピアノの旋律と、落ち着いたサックスが一際際立つ名曲だ。

 

ちなみに、ピアノを担当するのは、クリヤ・マコトだ。

 

クリヤ・マコトは、日本のアニメジャズ界において欠かせない存在であるため、いずれ大人のためのアニメ・ジャズ入門でとりあげることにする。

 

この曲は、このアルバムの中で一番、落ち着いて聴くことのできる曲かもしれない。

 

バーの中で流しても、まったく違和感がない。

それゆえ、何も知らない人は、これがまさか、

エヴァンゲリオンの曲

などとはまったく想像すらできないだろう。

【第10曲】THEME Q, SUPPA-DUPPA!

第10曲は「THEME Q, SUPPA-DUPPA!」

 

原曲は、「Kindred Spirits (Thème Q) 」だ。

フォース・インパクトが発生した後、シンジと渚カヲルとのシーンで使われる。

 

この曲で特徴的なのは、スティールパンが用いられている点だ。

 

スティールパンは、20世紀中頃にカリブ海のトリニダード・トバゴ共和国で生まれた謎の打楽器だ。

 

カリブ海で唯一の石油産出国であるトリニダード・トバゴでは、石油を入れるドラム缶が豊富にあったため、ドラム缶を利用した楽器が発明された。

 

具体的には、ドラム缶を輪切りにして底面をハンマーで叩いて凹まし、凹面型の平鍋(パン)型に成形した上で、内面に面積の異なる複数の面を作り、それぞれの面を叩くと異なる音が出るように調整する。

 

スティール(鋼)から作られたパン(平鍋)という意味から「スティールパン」という名がついたものと思われるが、ドラム缶から作られたにもかかわらず、その音色は、ポワワ〜〜〜ンと意外と心地よくと響く。

 

しかも、叩く場所によって異なる高さの音が出るため、打楽器にしては驚くほど多彩なメロディーも表現できるのだ。

 

そのため、スティールパンは、

「20世紀最後にして最大のアコースティック楽器発明」

と呼ばれ、廃材同然のドラム缶から作られたのにもかかわらず、トリニダード・トバゴ共和国から、「国民楽器」として正式に認められた由緒正しい楽器なのだ。

 

最新のテクノロジーが満載の新世紀を舞台にしたアニメのジャズアレンジに、あえてドラム缶から作られたローテク打楽器・スティールパンを採用するセンスは、フォース・インパクト並みにインパクトがあるが、実際に聴いてみると、これが驚くほどマッチングしているのだ!

 

序盤は、スパイドラマを思わせるミステリアスな旋律から始まる。

続いて、重厚なホーンセクションの演奏を背景に、スティールパンが怪しげな旋律を奏でる。

 

原曲は、オペラ風の悲劇的な曲調の曲だったが、ジャズ・アレンジ版は、

ラテン風のノリノリのビッグバンドジャズに仕上がっている。

 

また、スティールパンのソロも見事だが、中盤のアルト・サックスのソロも聴きごたえがあり、全体的にミステリアスな雰囲気の漂うラテンジャズといえるだろう。

【第11曲】THE IMAGE OF BLACK ME

第11曲目は、哀しげなストリングスから始まり、流れるようなピアノの音色が響く。

 

原曲は「REI 1」。

TV版では、包帯が巻かれた綾波レイの痛々しいシーンで流れる曲だ。

 

ヴォーカルは、林原めぐみ。

ジャズアレンジっぽく、流れるようなピアノの音色に淡々と鳴り響くベース、そして囁きかけるような怪しげなフルートが流れ、大人の世界の魅力にあふれた曲だ。

また、バックコーラスの女性ヴォーカルも素晴らしい。

 

特に、中盤からの流れるようなピアノソロと怪しげなフルートの共演が、大人の雰囲気を見事に表しているといえるだろう。

 

聴いているだけで、場末の怪しげなバーにいるような気分になるミステリアスな曲だ。

 

綾波レイの大人の側面を曲にするとこんな感じだろうか?

【第12曲】WEEKEND, THE OUTRO

第12曲目は、男性コーラスのアカペラで始まる。

 

原曲は「MISATO」。

その名の通り、シンジがミサトさんのマンション内に初めてお世話になるときに流れるコミカルで明るい曲だ。

 

しかもこの曲、楽器類を一切使わず、フィンガースナップと人間の声だけのフルアカペラという、テイク6を彷彿とさせるセンスあふれる意欲曲だ。

 

演奏は、Freedom Gospel Choirという合唱団。

 

曲の長さ自体は、1分ちょっとの短い曲だが、鷺巣詩郎のセンスを感じさせる1曲といえるだろう。

【第13曲】FLY ME TO THE MOON

第13曲目は、やはりこの曲、「FLY ME TO THE MOON」だ。

 

原曲はもともとは、1954年に作曲家・作詞家のバート・ハワードによってキャバレー用のバラードとして書かれ、ニューヨークのブルー・エンジェル・ナイト・クラブの歌手フェリシア・サンダーズによって最初に歌われた曲で、そのときは、「In other words(つまり、いいかえれば)」というタイトルだった。

 

Amazonリンク In Other Words (Fly Me to the Moon) [Original Version 1954]

上は、歌手ケイ・バラードによりレコーディングされたオリジナル版だ。

そのときの曲調は、今日知られたものよりもテンポがかなりゆっくりとしたものであり、哀愁漂うバラードだった。

 

その後、この曲は、クリス・コナーやジョニー・マティス、ポーティア・ネルソン、ナンシー・ウィルソンなど多くのジャズ・シンガーやキャバレー歌手によって歌われた。

 

1960年にペギー・リーがTV番組「エド・サリバン・ショー」でこの曲を歌った際に、この曲の人気が高まり、「Fly Me to the Moon」として知られるようになり、1963年にタイトルを公式に変更するようバート・ハワードを説得した。

Amazonリンク Fly Me to the Moon

その後、「Fly Me to the Moon」は、1960年代にナット・キング・コールやサラ・ヴォーン、ブレンダ・リーを含む著名な歌手によって歌われた。

 

1962年に作曲家・編曲家のジョー・ハーネルが「Fly Me to the Moon」をボサノヴァ風にアレンジしてリリースすると、1963年にはビルボード200チャートで3位を獲得するほどの人気曲となった。

 

ボサノヴァ・アレンジのソングバージョンは、1960年代にロイ・ハーネス、アル・ヒルト、オスカー・ピーターソンを含むアーティストによってリリースされた。

 

だが、この曲を一躍有名にしたのは、1964年のアルバムにおけるフランク・シナトラの歌だろう。

Amazonリンク シナトラ、ザ・ベスト!

ちなみに、フランク・シナトラの「Fly Me to the Moon」は、「私を月へ連れて行って」というタイトルを有することから、アポロ10号によって月の軌道上でかけられ、アポロ11号においては、宇宙飛行士のバズ・オルドリンが月面上に降り立った後でポータブルカセットプレーヤーで演奏されたというエピソードがある。

 

「Fly Me to the Moon」は、エヴァのEDでは、イギリスの歌手クレア・リトリーや、林原めぐみ、高橋洋子、Aya、Akiによってさまざまなアレンジのバージョンで歌われている。

Amazonリンク 残酷な天使のテーゼ/FLY ME TO THE MOON

というわけで、「エヴァジャズ」における「Fly Me to the Moon」のアレンジだが、軽快なピアノとサックスとの共演によるアレンジが際立つ一曲となっている。

 

ピアノとサックスのデュエットだけで、7分25秒にもわたって少しも飽きさせないのは、原曲の素晴らしさも当然あるが、何よりも鷺巣詩郎のセンスによるものが大きいだろう。

エヴァのEDに「Fly Me to the Moon」が採用された本当の理由

以上、アルバムの簡単なレビューを行った。

 

上で説明したように、「Fly Me to the Moon」はジャズのスタンダードとして知られた曲だが、庵野監督の希望によりこの曲がエヴァのエンディング・テーマに採用されたそうだ。

 

ところで、なぜ庵野監督が「Fly Me to the Moon」が好きだったのか?

庵野監督もジャズ・ファンだったのか?

いや、彼はジャズ・ファン以前にオタクなのだ!

 

実を言うと、漫画家・竹宮惠子先生の作品に「私を月まで連れてって!」という、21世紀後半のアメリカを舞台に、NASAに勤めるA級宇宙飛行士と超能力少女との関係を描いたSFラブコメディがある。

Amazonリンク 私を月まで連れてって! 1 (フォアレディコミックス)

竹宮惠子先生によると、この作品は、「Fly Me to the Moon」のタイトルから着想を得て創作されたそうだ。

 

しかも、この作品、後に完全版が出た際に、庵野監督が推薦文を書いているのだ!

それによると、庵野監督は

この作品から「Fly Me to the Moon」の存在を知った

という。

 

すなわち、エヴァのEDで「Fly Me to the Moon」が採用されたそもそもの理由は、庵野監督がジャズファンだったからというより、むしろ、

庵野監督が少女漫画オタクだったから

といえるだろう。

な、なんだってーーーっ!

 

というわけで、同じ少女漫画大好き中年オタクとして、

少女漫画からジャズ曲を知った偉大なる庵野監督に敬礼!!

というわけで、あなたも、このアルバムを聴いて、華麗なるエヴァンゲリオン・ジャズ・ナイトの世界を堪能することにより、充実した大人のオタクライフを心ゆくまで存分に満喫してほしい!

 

オタクパパより愛を込めて!

 

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重度のコミュ障のため、友達ゼロのオタク親父。初音ミクと魔法少女をこよなく愛する。

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