親愛なる読者諸君!
オタクパパだ!
あなたはこれまで、第二次世界大戦のヨーロッパ戦線を舞台にした戦争映画で
ドイツ軍
↓
極悪非道のやられ役
という、いかにもご都合主義の映画を観て、幻滅したことはないだろうか?
実際、これまで戦争映画の多くが、勝者である
連合軍側の視点
で描かれているため、これはある意味、仕方がないことかもしれない。
だが、絶望するのはまだ早い。
なぜなら、第二次世界大戦ものの戦争映画の中には、
ドイツで高く評価され
ドイツ人が大絶賛
している作品が少なからずあるからだ。
それらの作品は、従来のハリウッド映画に見られるようなドイツ軍が極悪非道なやられ役として描かれるご都合主義的な映画ではなく、
ドイツ軍が主役
の名作映画だ。
ドイツ軍が主役だけあって、これらの映画では、ドイツ軍は従来の映画のようなステレオタイプの悪役ではなく、あの激動の時代を必死で生き抜いた等身大の兵士たちの苦悩や葛藤が大変リアルに描かれており、
戦争アクションだけでなく
ヒューマンドラマとしても
大変素晴らしい出来
なのだ!
というわけで、今回は、小学生の頃から重度の戦争オタクだった私が
ドイツで評価の高い
ドイツ軍視点の
おすすめ名作戦争映画
を厳選して紹介したい。
なお、以下の説明では、なるべくネタバレがないように注意しているので、安心して読み進んでほしい。
ドイツ軍が主役の名作戦争映画
戦争のはらわた
さて、
第二次世界大戦の
ドイツ軍が主役の
映画で最高の作品
をあげろといわれれば、私は迷わずこの「戦争のはらわた」をおすすめしたい。
「戦争のはらわた」は、イギリス・西ドイツ合作で1977年に制作された作品だ。
「戦争のはらわた」というのは邦訳で、原題は
Cross of Iron
(鉄十字勲章)
だ。
正直なところ、邦題にはセンスのかけらもなく、私自身、むしろ原題のまま
「クロス・オブ・アイアン」
にしたほうが、よっぽど良かったのではないかと思う。
それはともかくとして、本作が上映された当時、かつて敵であったドイツ軍が主人公の映画のためか、アメリカではそれほど人気がなく、賛否両論があったそうだ。
また、一説によると、同じ年に上映された「スターウォーズ」の陰に隠れて埋もれてしまったため、アメリカではヒットしなかったという。
ドイツで記録的な大ヒットをした名作戦争映画
だが、どういうわけか、アメリカでは全くの不振だったのにもかかわらず、本作は
ドイツで大ヒット
し、しかも歴史的な名作映画
「サウンド・オブ・
ミュージック」以来
最高の興行収入を記録
したのだ!
また、本作は、ドイツだけでなく、ヨーロッパ中で多くの支持を得たそうだ。
本作がドイツでヒットした理由として、やはりそれまでの連合軍視点のご都合主義的な戦争映画と違って、
ドイツ軍の視点から
理不尽な戦争にもがき苦しむ
兵士達の姿をリアルを描いた
点がドイツ人の共感を呼んだ
からだといえるだろう。
というわけで、以下、本作品の魅力をいくつかあげよう。
【魅力1】滅びゆくドイツ軍の哀愁漂うストーリーに泣ける
本作の監督を担当したのは、アメリカの映画監督であるサム・ペキンパーだ。
ペキンパー監督は、1969年の「ワイルドバンチ」でスローモーション撮影を多用し、
「血しぶきと破片、硝煙の飛び散る
銃撃描写を超スローモーションで
映し出す」
という斬新な手法を確立し、独特のバイオレンス描写でアクション映画に新境地を切り開いたため、バイオレンス映画の巨匠として知られている。
本作においても、冒頭のソ連軍の迫撃砲陣地の強襲シーンなどでペキンパーお得意のスローモーション撮影が活かされており、すさまじい迫力を生み出している。
なお、「鉄拳」などの格闘ゲームで、
KO前にスローモーションになる
演出があるが、あれなどはまさしく、ペキンパー監督のスローモーション撮影がもともとのルーツといってもいいだろう。
ちなみに、日本公開時のキャッチコピーは、
「戦争は最高の
バイオレンスだ」
実際、このキャッチコピーのとおり、本作品のバイオレンス描写は、観客のみならず、映画制作者にも大きな衝撃をもって迎えられた。
また、ペキンパー監督の手がけた作品は、
滅びゆく男たちの
哀愁漂う作風
が特徴的であり、この作風は本作にも受け継がれている。
実際、クライマックスのシーンで、主人公のシュタイナー伍長たちが機関銃で容赦なく撃たれるシーンは、
何度観ても感涙に値する
映画史上屈指の名シーン
といえるだろう。
ところで、ペキンパー監督は、本作の監督を手がけるために、
「スーパーマン」と
「キングコング(76年版)」
の二大超大作の
オファーを断った
という。
このエピソードからも分かるように、ペキンパー監督の本作にかける意気込みと情熱の強さは半端ではなく、それだけに素晴らしい作品に仕上がっているのだ。
【魅力2】ドイツ軍の主人公が渋くて格好よすぎる
本作で主人公のシュタイナー伍長を演じるのは、ジェームズ・コバーンだ。
ジェームズ・コバーンは、「荒野の七人」や「大脱走」でスティーブ・マックイーンやチャールズ・ブロンソンと共演し、アメリカを代表するタフガイの代表ともいえる名優だ。
コバーンが演じるドイツ兵はまさしくはまり役であり、末期感あふれる戦場で必死に戦う男の姿を見事に演じきっている。
やはり、
泥臭い東部戦線の戦場には
渋いオッサンが一番
といえる。
本作を観た後、第二次世界大戦もののFPSをする際は、私はよくシュタイナー伍長になりきって、PPSh-41短機関銃を撃ちまくったものだ。
なお、この作品では、女性が登場するシーンが若干退屈だが、そこはスルーしても全然問題ない。
ドイツ軍兵士が主人公の
格好いい映画を観たい!
そんなあなたにおすすめの最高の作品が、まさしくこの「戦争のはらわた」といっても過言ではない。
【魅力3】オープニングに込められた深い意味
ところで、本作品のオープニングは、白黒の実写フィルムを編集したものであり、戦前のドイツ国内のシーンが描かれている。
オープニング曲は、ドイツの古い童謡
「Hänschen klein」
(幼いハンス)
だ。
ちなみに、この曲のメロディは、日本では、唱歌「蝶々」として知られ、知らないものはいないほどの名曲だ。
この曲の作詞はもともと、ドレスデンの教師であったフランツ・ヴィーデマンが、子供たちに別離・出発・悲しみからの回復を経験させるという教育上の目的があった。
歌詞の内容は、1番から3番まで次のような内容だ。
1番:
幼い「ハンスちゃん」(Hänschen)が旅に出て母親が見送る
2番:
7年の放浪と遍歴の末に「ハンスちゃん」は、日焼けした大人のハンスへと変わる
3番:
すっかり大きくなったハンスが故郷に戻るが、あまりの変わり様に、誰にもハンスだと分かってもらえない。
だが、再開した母親は、すぐに彼がハンスだと分かってくれた。
本作では、オープニングにこの曲を使用することにより、戦争へと召集される子供達を見送る母親の心情を表現している。
だが、本作では、戦場で疲弊したドイツ兵達のすっかりやつ果てた姿を併せて描くことにより、ドイツを旅だった幼いハンスちゃんが、地獄の東部戦線で苛酷な戦闘を戦いぬくうちに、
母親でさえも分からないほど
すっかり変わり果ててしまった
という皮肉も込められているのだ。
このように、本作は、
オープニング1つ
とってみても実に深い
のだ!
【魅力4】末期感あふれる東部戦線の描写が熱い
本作の舞台は、
1943年の東部戦線
だ。
「東部戦線」と聞いて、半ば反射的に心が震え、胸がときめいたあなたは、まさしく私と同じ、
重度のWWII戦争オタク
といえるだろう。
実際、西部戦線を「スポーツ」に例えれば、東部戦線はまさしく、
「この世の生き地獄」
といっても過言ではない。
実際、延々と続くソ連軍の砲撃や、有効な対戦者兵器もなく、対戦車地雷を手に鬼戦車T-34に肉薄せざるを得ないドイツ軍の描写は悲惨そのものだ。
本作は、過酷な東部戦線でもがき苦しみながら戦う
泥臭い男たちの物語
を心ゆくまで堪能できるのだ!
【魅力5】本物の武器や戦車を心ゆくまで堪能できる
本作のロケはユーゴスラビアで行われ、本作の撮影のため、ユーゴスラビア軍の装備が提供された。
それらの装備は、第二次世界大戦のドイツ軍の装備とオーバーラップするものが多く、例えば、
MG42機関銃
MP40短機関銃
PPSh-41短機関銃
ルガーP08
ワルサーP38
Kar98k小銃
モシンナガン小銃
マキシム重機関銃
シモノフPTRS1941対戦車ライフル
などが登場し、ドイツ軍・ソ連軍銃器オタクを唸らせるほどだ。
しかもハイライトでは、なんとユーゴスラビア軍の
本物のT-34-85戦車
が動きまくるシーン
を堪能でき、
戦車オタクも狂喜する
ほどの出来といえる。
(↓)本作において、本物の鬼戦車T-34が工場内に突っこんで蹂躙しまくるシーンは、T-34の凶暴さを存分に引き出した屈指の名シーンといえるだろう。
以上のように、本作は、
ドイツ軍が好きな人に
文句なくおすすめの
名作戦争映画
といえる。
Uボート
Uボートは、ドイツの潜水艦Uボートの乗組員達の過酷な戦闘を描いたドイツの戦争映画であり、1981年に公開された名作戦争映画だ。
また、1982年にアメリカで公開されたとき、本作は
アカデミー賞6部門
にノミネート
され、国際的にも高い評価を受けている。
以下、本作の魅力をいくつか紹介しよう。
【魅力1】実物大のUボートのセットを建設して撮影した
本作が凄いのは、構想から完成まで4年もの歳月を費やし、3200万マルク(約40億円)もの巨額の製作費がかけられた点だ。
また、この映画の撮影のために、
Uボートの実物大の
レプリカが建造された
そうだ。
このように、本作は、映画のセットとは思えないほどリアルに作り込まれたUボートの艦内を舞台に、
極限状態で戦う男達
の姿をリアルに描写
しており、臨場感が半端ではない。
【魅力2】Uボートに同乗した実体験に基づくリアルな描写
また、本作は、実物大のセットのリアルさもさることながら、第二次世界大戦中にドイツ海軍報道部隊の報道班員として実際にU96に同乗して取材したロータル=ギュンター・ブーフハイムの実体験に基づいている。
実際、本作に登場するヴェルナー少尉は、ブーフハイム自身が投影されたキャラクターだ。
実体験に基づく潜水艦の艦内描写はとことんリアルで、この映画を観た者は、凄まじいまでの迫力に引き込まれてしまう。
例えば、
駆逐艦のソナー音を聞きながらひっそりと息を潜める男達
少しずつ狙いが定まって近づいてくる爆雷音
深海の圧力を受けて艦がきしむ音
水圧でボルトが飛び出し、容赦なく水が襲いかかる艦内
など、本作では見所のシーンが満載だ。
また、ラストに近づくにつれ、乗組員達の髪の毛が伸び放題になり、無精ひげが目立つようになるのも、実にリアルだ。
Uボートの乗組員達に容赦なく襲いかかる数々の試練は、息をつく間もない展開だ。
だが、それ以上に、ご都合主義のハリウッド映画では決してありえないラストの意外な展開に、誰もが大きな衝撃を受けることは間違いない。
そういう意味で、本作は、
潜水艦映画
の最高傑作
であり、ドイツ軍好きでなくとも、おすすめの作品だ。
【魅力3】テーマ曲が格好良すぎて失神するレベル
本作で繰り返し使用されるクラウス・ドルディンガーによるテーマ曲は、
映画音楽としても
最高レベルの出来
だ。
その重厚かつ疾走感あふれるテーマ曲は、言葉では語りつくせないほどの名曲だ。
実際、映画を見終わった後で、BGMを聴くだけで映画の名シーンがありありと脳裏に蘇ってくるほどだ。
上のサントラの後半では、ドイツ語の会話や波のうねり音、魚雷の発射音、機雷の炸裂音までも入っており、実際に潜水艦の中にいて、リアルに戦っているかのような臨場感が素晴らしい。
どんなに疲れていても、この曲を聴くだけで闘志が湧き、戦闘モードにエンゲージできるため、
深夜の作業音として
おすすめの曲
といえるだろう。
橋
「橋」は、1959年の西ドイツの戦争ドラマ映画であり、出版された自伝をもとに映画化されたものだ。
監督のベルンハルト・ヴィッキは、1962年にアメリカの名作戦争映画「史上最大の作戦」のドイツ側パートを担当したことでも知られている。
戦争末期に召集されたドイツの少年たち
従来の戦争映画と違い、本作の主人公たちは、まだ年端もいかない
10代の少年たち
だ。
日本でも、太平洋戦争の末期、人員の確保のために学徒出陣がなされ、多くの有望な若者達が過酷な戦場に散っていったが、戦争末期のドイツでも、日本と同様に、少年達が戦争にかり出された悲惨な歴史がある。
実話に基づく悲惨なストーリー
本作のストーリーだが、第二次世界大戦末期のドイツで、町を守るために少年兵たちが召集される。
ヒトラー総統と祖国へ忠義のためとはいえ、パンツァー・ファウスト(米軍のバズーカに相当するドイツの携帯式対戦車兵器)やMG42機関銃、MP40短機関銃を手に、正規兵に支援された米軍戦車に立ち向かう少年達の姿は、あまりにも悲惨だ。
ちなみに、この映画で描かれた出来事は、1945年4月27日に起こったものとされている。
皮肉なことに、そのわずか3日後に総統アドルフ・ヒトラーが、首都ベルリンの総統地下壕でエヴァ・ブラウンを道連れにして自らの命を絶ち、その1週間後にドイツは無条件降伏した。
それゆえ、ヒトラーが連合軍に対して早期に無条件降伏していれば、多くのドイツ国民が救われたことだろう。
だが、ヒトラーは、自らを慕って支持したドイツ国民を無惨にも見捨て、最後の最後まで、自らのつまらない自尊心を満たすことを選んだのだ。
本作は、とても重い作品だが、
ヒトラー個人のエゴによって
多くの罪もない少年たちが
どのような運命を辿ったのか
を知る意味でおすすめの
名作戦争映画
といえるだろう。
ジェネレーション・ウォー
「ジェネレーションウォー」は、2013年3月17, 18, 20日に第2ドイツテレビ(ZDF)およびオーストリア放送協会(ORF)でテレビ放映されたドイツのテレビ映画だ。
上にあげた3作品と比べ、本作は、日本での知名度はいまいちだが、
ドイツで大ヒットし
国外でも賛美両論を
巻き起こした
戦争ドラマシリーズの傑作
だ。
本作は、6年かけて脚本が完成し、1400万ユーロ(約17億円)もの巨額の製作費をかけたそうだ。
原題は、「私たちの母、私たちの父」(Unsere Mütter, unsere Väter)。
ナチスと戦争に人生を
狂わされた5人のドイツの
若者達の壮絶な運命
を描いた衝撃の意欲作だ。
ドイツの国内外で賛美両論を巻き起こしたストーリー
本作は、従来の戦争映画にない視点で描かれたため、放映後、ドイツの国内外で多くの賛否両論を巻き起こした。
本国ドイツでは、各エピソードで
約700万人もの
視聴者を記録
し、2013年のドイツテレビ賞を受賞した大ヒット作だ。
物話は、ドイツがソ連に侵攻する直前の1941年のベルリンからはじまる。
5人の仲の良い若者達がベルリンのとある場所で集う。
ドイツ国防軍に入隊した兄弟ヴィルヘルムとフリードヘルム
従軍看護師のシャルロッテ
歌手志望のグレタ
ユダヤ人の仕立屋のヴィクター
彼らは、クリスマスまでに再開することを誓う。
だが、ヴィルヘルムとフリードヘルムはドイツ国防軍の兵士として東部戦線に送られ、シャルロッテは従軍看護師として前線後方の野戦病院に送られ、負傷兵の手当をする。
一方、グレタは、恋人であるユダヤ人のヴィクターをニューヨークに逃すための書類を入手しようとするが、ヴィクターはゲシュタポに逮捕され、強制収容所行きの列車に載せられてしまう。
本作では、
東部戦線の激しい戦闘が
リアルに描かれている
が、その激烈な戦闘でさえも思わず忘れてしまうほどの衝撃的なシーンが数多く盛り込まれている。
例えば、ウクライナ人を利用してユダヤ人を迫害するSD(親衛隊保安部)の将校が年端もいかない
ユダヤ人少女を銃撃する
衝撃的なシーン
が描かれている。
また、主人公の少尉が上官から
丸腰の捕虜の処分
を命令され、身も心もズタズタになっていく様子はあまりにも悲しい展開だ。
アメリカの戦争ドラマシリーズの名作「バンド・オブ・ブラザーズ」が勝者の視点で描いた戦争ドラマの傑作とすれば、本作はまさしく
敗者の視点で描いた
戦争ドラマの傑作
といえるだろう。
また、「バンド・オブ・ブラザーズ」の指揮官の名前は、
「ウインターズ(Winters)」
だったが、本作の指揮官の名前も
「ヴィンター(Winter)」
という偶然の一致には驚く(しかも、兄弟あわせて、Winters!)。
また、ヴィルヘルムに思いを寄せるシャルロッテと、ナチスの宣伝のために利用されるグレタの2人のドイツ人女性の悲しい運命は、涙なくして観ることはできないだろう。
なお、本作は、ヨーロッパ各国から絶賛と激論を巻き起こし、本国ドイツでは、
「テレビ史上の一大事件」
と呼ばれた戦争ドラマの傑作だ。
そのあまりの衝撃的な内容に、一部では
「実話ではないか?」
とも囁かれたという。
歴史的事実の改ざん疑惑
なお、本作品は、ポーランドにおいて、
ポーランド人の描写が
歴史的事実と一致せず
改ざんがあった
として、厳しい批判にさらされた事実も記しておきたい。
作中では、ポーランドのレジスタンス組織である国内軍(Armia Krajowa)が、急進的な反ユダヤ主義者として描かれている。
だが、これは事実とは異なる。
なぜなら、ポーランドの国内軍は、ポーランド内のホロコーストからユダヤ人を救済するためのジェゴタ(Zegota)と呼ばれる地下組織を組織し、ワルシャワだけでも2,500人ものユダヤ人児童をワルシャワ・ゲットーから救い出して保護していたからだ。
しかも、かくまったユダヤ人に対する医療ケアも行われていたそうだ。
そのため、本作のポーランド国内軍の描写には「歴史の改ざん」がなされたものとして、ポーランドのオーストリア大使とドイツ大使館がドイツに抗議の手紙を送り、ドイツ第2テレビの放送局が謝罪したという経緯がある。
また、アメリカやイスラエルでも、ホロコーストの描写が省かれているなど、ナチスドイツによるユダヤ人迫害の描写が手ぬるいとして厳しい批判を浴びている。
だが、このような問題点を差し引いても、本作は、ドイツ人が過去の戦争から逃げずに真剣に向き合い、
アメリカの戦争ドラマシリーズ
「バンド・オブ・ブラザーズ」
に匹敵する壮大な戦争ドラマ
シリーズを制作した
という点で、大いに評価に値するものといえるだろう。
というわけで、
ドイツ人が制作した
戦争ドラマシリーズ
の最高傑作
として、本作はおすすめだ。
特に、私のように、
ドイツ国防軍の兵士が
英語でなくドイツ語を話す
戦争映画に飢えている人にとっては、本作は文句のない作品といえるだろう。
ロンメル 第3帝国最後の英雄
本作は、
ドイツの陸軍元帥にして
英雄エルヴィン・ロンメル
について、1944年3月から10月までの生涯の最後の7ヶ月を描いた作品だ。
エルヴィン・ロンメルは、二次世界大戦のフランスや北アフリカでの戦闘指揮において驚異的な戦果を挙げ、広大な砂漠に展開されたアフリカ戦線において、巧みな戦略・戦術によって戦力的に圧倒的優勢なイギリス軍をたびたび壊滅させたドイツきっての名将だ。
イギリスの首相チャーチルをして
ナポレオン以来の戦術家
とまで評せしめた天才だ。
また、アフリカにおける知略に富んだ戦いぶりによって、第二次大戦中から
砂漠の狐
の異名で世界的に知られている。
(↓)カラー処理されたロンメルの実物写真。
Bundesarchiv_Bild_146-1985-013-07,_Erwin_Rommel.jpg
ロンメルは、当時のドイツの将校に多かった貴族出身ではなく、中産階級出身者初の陸軍元帥であり、また、悪名高いSS(親衛隊)ではなく、ドイツ国防軍の所属であったため、非常に人気の高い将帥の一人だ。
また、ロンメルは
騎士道精神にあふれた軍人
だったことでも知られている。
ロンメルの騎士道精神を示すエピソードとして、以下のものが知られている。
それによると、ナチスの迫害から逃れてきた人々で編成され、ユダヤ人が多かった第1自由フランス旅団に対し、ヒトラーは、
「戦闘において仮借なき戦いを遂行して殲滅せよ。
殲滅しきれず捕虜にしてしまった場合は秘密裏に処分せよ」
という非情な命令をロンメルに下したそうだ。
だが、「無防備な人間を処分せよ」との騎士道精神に反するヒトラーの無慈悲な命令に、ロンメルは怒りを覚え、この命令を握りつぶして部下に伝達しなかったという。
そういう点で、東部戦線でユダヤ人狩りをするSSの行為に協力し、あるいはその実態を知りつつも、見て見ぬふりをしていた陸軍総司令部(OKH)の高級将校達と違い、ロンメルは、戦術家としてだけでなく、
人道的にも非常に優れた人物
であったといえるだろう。
極悪非道なナチスに対する自らの反ナチ的態度を特に隠そうとはせず、ナチスの犯罪や無能さを容赦なく批判していたロンメルであったが、そんな彼にも歴史は容赦せず、過酷な運命が訪れることになる。
本作でロンメルを演じたのは、ドイツを代表する俳優の一人ウルリッヒ・トゥクルだ。
トゥクルは、本作の優れた演技により、ドイツ最古のメディア賞であるバンビ賞を受賞した。
本作は、約600万ユーロもの巨額な費用をかけてドイツの英雄・ロンメルの最期を描き、ドイツだけで
638万人もの視聴者
を記録した大ヒット作
だ。
なお、本作はロンメルの伝記的な作品であるため、
戦闘シーンがほぼ皆無
である点に注意してほしい。
そういう意味では、戦争映画のカテゴリから若干外れるかもしれない。
だが、ドイツ国防軍の末端の兵士達や名も無き少年達と同様に、
騎士道にもとるヒトラーと
ナチスに反抗的な英雄が
最後にどのような運命を
辿ったのかを知るために
本作を観る価値は十分にある
といえるだろう。
【最後に】オタクパパからのメッセージ
ドイツ軍の本質を知りたいならドイツ軍視点の映画を観ろ!
以上、5つの映画作品を厳選して紹介した。
ところで、ドイツ軍の本質を知りたいのなら、連合軍視点のハリウッド映画ではなく、ドイツ軍視点の映画を観ることをおすすめしたい。
実際、「戦争のはらわた」のシュタイナー伍長や、Uボートの乗組員達、「ジェネレーションウォー」のウィンター兄弟、橋を守るために戦った無名のドイツの少年達、ロンメル元帥の生き様を見れば、従来のハリウッド映画に描かれてきた
極悪非道なやられ役
としてのドイツ軍の
イメージが虚構である
ことに気づくだろう。
実際のところ、確信犯であったヒトラーやナチスの幹部やSSの連中はともかくとして、ドイツ国防軍の末端の兵士達は、祖国の未来を信じて戦った純粋な若者達だ。
だが、皮肉なことに、彼らは結果として、ナチスの侵略戦争に加担し、多くの人々を傷つけたあげく、歴史的にも卑劣な侵略者として記憶されることになった。
そういう意味で、彼らドイツ国防軍の若者達こそは、
ヒトラーとナチスの理念に
騙された犠牲者
ともいえるかもしれない。
世界の最先端をいく「ガンダム」の斬新な視点
昨今、ガンダムシリーズにおいて、2012年から「ビッグコミックスペリオール」で連載された漫画「機動戦士ガンダム サンダーボルト」(太田垣康男)で、
ジオン公国軍の一兵士の
視点で描かれたストーリー
が話題になった。
「サンダーボルト」において、ジオン軍側の主人公のダリル・ローレンツは、ジオン公国の理念に共鳴して、ジオン軍に入隊したわけではない。
ローレンツは、それまで難民としか見なされず、父の病気を治療するため、そして、母と妹の生活を良くするため、
家族が市民権を得られる
ようにジオン軍に入隊した
という設定がなされている。
このように、ジオン軍の一兵士の視点から一年戦争を描く構成とすることで、従来のガンダムシリーズで描かれてきた
ジオン軍の兵士
↓
極悪非道のやられ役
という構図が見事に崩れ去ったのだ。
同様に、当時のドイツの若者達の中にも、ヒトラーのナチスの理念に共鳴したわけではなく、ダリル・ローレンツと同じように、家族の生活を楽にするためにドイツ国防軍に入隊したものも少なくなかったことは容易に想像できる。
驚くべきことに、「サンダーボルト」は、ドイツで「ジェネレーション・ウォー」が放映される前年に、このような斬新な視点を読者に提示しているのだ。
そういう意味で、
日本の漫画作品が
世界に先駆けて
単純な善悪の観念を
超越した斬新な視点を
提供している
点は、まさしく驚異的というほかないだろう。
というわけで、諸君も日本の優れた漫画やアニメ作品を観て、
ジオン軍だから絶対悪
ガンダムだから善
といった、ハリウッド映画的な杓子定規な硬直した考え方を改め、
「ジオン公国軍にも
ダリル・ローレンツみたいな
いい奴もいれば、
ガンダムのパイロットにも
イオ・フレミングみたいな
残忍な奴もいるんだな」
と、柔軟な価値観を養い、充実したオタクライフを存分に満喫するようにしてほしい!
オタクパパより愛を込めて!
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