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ドイツ軍が主役だ!第二次世界大戦の小説・漫画・戦記の傑作10選

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親愛なる読者諸君!

オタクパパだ!

 

今回は、

ドイツ軍兵士が主役の

第二次世界大戦の戦争

小説・漫画・戦記の傑作

を紹介したい。

WWIIドイツ軍が主人公の小説・漫画・戦記の傑作10選

「鷲は舞い降りた」ジャック・ヒギンズ

「鷲は舞い降りた(The Eagle Has Landed)」は、イギリスの小説家ジャック・ヒギンズにより1975年に発表された傑作戦争小説だ。

 

当時、この小説は、あらゆる意味で衝撃的だった。

 

なぜなら、イギリスの小説であるにもかかわらず、

ドイツ空軍の降下猟兵

(落下傘部隊)の隊員

が主人公

だからだ。

(↓)FG42を構える降下猟兵

しかも、彼らの任務は、第二次世界大戦当時の英国首相ウィンストン・チャーチルの暗殺という恐るべき任務だ。

(↓)トミーガンを構えるウィンストン・チャーチル首相(1940年)

そんな小説がイギリス人に受け入れられるわけがないだろ!

 

そう思うのが自然だろう。

 

だが、驚くべきことに、「鷲は舞い降りた」は、発売直後から英米において約6ヶ月もの間ベストセラーに留まり続け、当時の連続1位記録を塗り替え、なんと

全世界で5000万部

以上もの売上げ

を記録したのだ。

 

しかも、翌年には映画化もされた。

 

「鷲は舞い降りた」が衝撃的だったのは、ハリウッド映画などの作品で、卑劣な悪役扱いされることが多かったドイツ軍の兵士を主役に描いただけでなく、皮肉な運命に翻弄された悲劇の男たちとして描いた点にある。

 

主人公のドイツ空軍降下猟兵のクルト・シュタイナ中佐は、東部戦線において柏葉・剣付騎士鉄十字章を授与され、ヒトラー総統閣下も直々の謁見を希望したほどの英雄だ。

(↓)柏葉・剣付騎士鉄十字章。159名のドイツ軍人と1名の日本軍人の計160名が受賞した。この柏葉・剣付騎士鉄十字賞の受賞者には、エーリッヒ・フォン・マンシュタイン元帥やミハエル・ヴィットマン(戦車兵のエース)、ゲルハルト・バルクホルン(エースパイロット)、ヨハヒム・パイパー、山本五十六(連合艦隊司令長官)など、錚々たるメンバーが受賞している。

だが、皮肉なことに、シュタイナ中佐は、東部戦線からの帰還途中、ポーランドのとある駅でSS(ドイツ親衛隊)から逃亡した名もなきユダヤ人の少女を助けたために、懲罰任務に従事させられる。

 

シュタイナ中佐は、数々の戦いで空挺奇襲任務において手腕を発揮した伝説の落下傘部隊の隊長だ。

 

作中では、親衛隊全国指導者のハインリヒ・ヒムラーも登場し、シュタイナ中佐を次のように評価する。

「非常に頭が良くて、勇気があって、冷静で、卓越した軍人……

 

 そして、ロマンテックな愚か者だ」

シュタイナ中佐は、早川書房の『冒険・スパイ小説ハンドブック』の主人公ランキングで3位に入る、人気の高い主人公だ。

 

歴史上、ウィンストン・チャーチルが暗殺されなかったことから、チャーチルの暗殺計画が失敗するという結末は明らかだ。

 

だが、この小説は、結末が分かっていても、息をつかせない展開に手に汗を握ることは間違いない。

 

そして、読者はいつの間にか、敵役であるはずのクルト・シュタイナ中佐の哀愁漂う生き様に共感する。

 

何より、主人公のシュタイナ中佐の生きざまが格好良すぎる!

 

敵国の男をここまでイケメンに描いた作品は珍しい。

 

「鷲は舞い降りた」はまさしく、戦争文学の金字塔ともいえる傑作だ。

「北壁の死闘」ボブ・ラングレー

「北壁の死闘(Traverse of the gods)」は、1982年に公表されたボブ・ラングレーの山岳冒険小説の傑作だ。

 

北壁とは、アイガー北壁のことだ。

 

アイガーは、スイスを代表する山で標高は3,970mだ。

 

アイガー北壁は高さ1,800mもの岩壁で、グランド・ジョラスの北壁、マッターホルン北壁とともに、

アルプスの三大北壁

と呼ばれる絶壁だ。

(↓)アイガー北壁。1934年から1958年までに25回の登頂が実施され、13回で67名が登頂に成功したが、15名もの犠牲者が出ている。

原題は「神々のトラバース(Traverse of the gods)」だが、「トラバース」とは、山岳用語で、「山の斜面を横断すること」という意味だ。

(↓)アイガー北壁の難所、神々のトラバース

「北壁の死闘」は、この神々のトラバースを登攀中のクライマー二人が、奇妙な遺体を発見したところから始まる。

 

下半身は白骨化していたが、上半身は氷漬けになっていたため損われていなかった。

 

二人は下山後、警察に通報しようとしたが、どういうわけか口止めされる。

 

だが、話をききつけたBBC調査員が、驚くべき過去の事実を探り出す。

 

この物語の主人公は、ドイツ国防軍のエーリッヒ・シュペングラー軍曹だ。

 

シュペングラー軍曹はもともと、名の知られたクライマーだった。

 

しかしながら、過去のアイガーでの登攀でのトラウマから悪夢に悩まされている。

 

そんなとき、

「ヨーロッパで最も危険な男」

と呼ばれ、連合軍に恐れられたドイツの親衛隊少佐オットー・スコルツェニーによって組織された新しいコマンド部隊に加わり、アイガー北壁に再び挑戦する。

(↓)「ヨーロッパで最も危険な男」オットー・スコルツェニー親衛隊少佐。

シュペングラー軍曹の任務は、原子爆弾の実験を行っていた連合軍の科学者を捕獲することだった。

 

嵐の中、アイガーにグライダーで降り立ったコマンド部隊は、連合軍の科学者の捕獲に成功する。

(↓)スコルツェニー率いるドイツ軍コマンド部隊のグライダー

出典 Bundesarchiv, Bild 101I-567-1503A-02 / Toni Schneiders / CC-BY-SA 3.0

そして圧巻なのが、悪天候の中、かつて敗北したアイガー北壁に再挑戦するシュペングラー軍曹の臨場感あふれる登攀シーンだ。

 

何より、主人公のシュペングラー軍曹が格好よすぎる。

 

男の中の男、

真のヒーロー

といってもいいほどの男っぷりだ。

 

「北壁の死闘」は、第二次世界大戦を舞台にした手に汗握る戦争冒険小説にして、臨場感あふれる山岳小説の最高傑作といえるだろう。

「泥まみれの虎 宮崎駿の妄想ノート」宮崎駿

「泥まみれの虎 宮崎駿の妄想ノート」は、アニメ監督の巨匠・宮崎駿の妄想をマンガにした作品だ。

 

アニメの制作の合間に模型雑誌である「月刊モデルグラフィックス」(大日本絵画)に不定期掲載されたものだ。

 

「泥まみれの虎」とあるが、

キャラクターは全員豚

である。

 

ここで、ジブリ映画の作風から、

「ちょっと待てよ!

 

 あの平和主義者の

 心優しい宮崎駿先生が

 他国を侵略しまくった

 悪逆非道のドイツ軍と

 いったい何の関係が

 あるってんだよ?」

と思われる方も多いかもしれない。

 

それが大ありである。

 

なぜなら、この「泥まみれの虎」は、第二次世界大戦の

ドイツ国防軍の軍人にして

戦車兵のエースである

オットー・カリウス

の活躍を描いた作品だからだ!

 

な、なんだってーーー!

(↓)1944年7月27日、柏葉剣付騎士十字章(胸元)の受章時に撮影されたオットー・カリウスのポートレート。22才での受章はドイツ陸軍において最若年だった。

出典 Bundesarchiv, Bild 146-1979-064-06 / CC-BY-SA

「泥まみれの虎」は、カリウスの戦記「ティーガー戦車隊」で絵が描かれたエストニアのナルヴァの戦い(1944年)を題材にしている。

 

原作を漫画化にするに当たり、原作にも記載されていない細かいディテールなどは想像で描くしかないのだが、

宮崎駿の妄想

が炸裂しまくっているのだ。

 

例えば、ペリスコープについた泥の汚れなどの細かいディテールなどはもちろんのこと、戦車の照準器でのシュトリヒによる細かい測距計算、砲塔を手動で回転させる際の参考のために回転窓を使って実験したり、ティーガーのハッチから外を除いたときに敵のT34のサイズを知るために、プラモデルを使って距離感をつかんだり、要するに

無駄に妄想しすぎ

なのだ。

(↓)カリウスが配属された第502重戦車大隊のティーガー戦車(1943年6月21日)

出典 Bundesarchiv, Bild 101I-461-0213-34 / Zwirner / CC-BY-SA 3.0

それだけに、異様なまでに軍オタ的な蘊蓄にあふれた作品に仕上がっており、この手の戦記物の漫画には珍しく、とにかく読んでいて満足感が段違いなのだ。

 

しかも、線路の土手の高さなど、原作の細かい部分が気になりすぎて、エストニアのナルヴァまで実際に取材にいっているほどなのだ!

オットー・カリウスに会いにドイツまで行った宮崎駿

戦後、カリウスは薬剤師の免許を所得し、1956年に搭乗したティーガー戦車に因んで、

ティーガー薬局

(Tiger-Apotheke、虎薬局)という薬局を開業していた。

 

驚くべきことに、宮崎駿は、薬局を営むオットー・カリウスにも直接会いにいっているのだ。

(↓)ティーガー薬局の前で、オットー・カリウスと並ぶ宮崎駿

(↓)田宮模型のタイガーI型中期型オットー・カリウス搭乗車のプラモを手にするカリウス氏。

(↓)会談の後でカリウス氏にサインをねだる宮崎駿

(↓)ポートレイト、本、プラモすべてにサインしたカリウス氏

いくら戦記物に感動したからといって、わざわざ現地まで足を運んだり、戦記を書いた本人に直接会いにいくなど、普通の人間なら妄想くらいにとどめるだろう。

 

だが、妄想を現実にしてしまうのが

宮崎駿という男

のすごいところ

なのだ!

カリウスをdisる?宮崎駿

上のカリウスのポートレイトを見ると、筋肉質のドイツ軍人にはまるで見えない。

 

それゆえ、軍服を着ていなかったら、

「どこかの高級ホテルの支配人?」

と、思わず勘違いしてしまいそうなほどだ。

 

おそらく同じような印象を宮崎駿も抱いたのだろう。

 

実際、「泥まみれの虎」に記載された宮崎駿のカリウス評は、以下のとおりだ。

「カリウスは優秀な戦車兵というよりも、ちょっと類を見ないような、巧妙なというか、冷静に落ち着いて、想像力豊かに手を尽くしていくタイプですよね。

 

しかもヨレヨレなのに……どうも体力ありそうにないよね、頭でっかちのちいさい男ですよね。」

快く会談までしてくれて、サインまでくれた相手に、

気持ちいいくらいに

ボロクソの評価

なのだ。

 

実際、「泥まみれの虎」を当のカリウス氏が読んでいたら、

カリウス

「おい!

 なんでイケメンの俺が

 豚なんだよ!?

 

 しかもヨレヨレって

 なんだよ!?

 

 てめえっ!!

 喧嘩うってんのか

 ゴルァ!!

 

 俺の貴重なサインと

 プラモを返せっ!!」

と、思わず憤慨するレベルかもしれない。

恩を仇で返す

とは、まさしくこういう行為をいうのだろう。

 

カリウスの漫画なのに、カリウスをdisっているのだ。

 

まさしく、世界的な巨匠だからこそ、できる芸当なのかもしれない。

「戦争が美化される仕組み」を分析した宮崎駿の優れた観察眼

ちなみに、宮崎駿はカリウスの戦記について、次のように語ってもいる。

「ドイツ軍のなかにもいっぱいいたと思うんですよ。

 

 寄せ集めの部隊とか、あるいは急造の師団とか、そういうなかにはほんとに役に立たない上官がいっぱいふんぞり返っていたと思うんです。

 

 それは変わらないと思いますよ。

 

 実際の戦車部隊ってのは、やっぱり精兵のなかのエリートを集めたような部隊だから、誇りも強かっただろうしね。

 

 そういうことも抜きにして語れないと思うんですよね。

 

 だからカリウスの戦記を読んで、ドイツの軍隊がみんなこうだったなんて、とんでもないまちがいだと思います。

 

 ほとんどが事大主義と錯覚によって成り立ってる軍隊のほうが多かったと思うんですね。

 

 だけど、戦後に伝えられてくるのは≪精兵≫の部分だけだから、それで誤解を生むんだと思います

要するに、戦記というのは、生き残りの精兵が書いている時点で、

生存者バイアス

精鋭フィルター

という、認知バイアスの魔法が働いているというのだ!

 

逆に、アインザッツグルッペンやカミンスキー旅団、SS特別連隊「ディルレヴァンガー」などの戦前ユダヤ人やポーランド人などに対してやましい行為をしまくった、ならず者集団の兵士たちは、自ら行った数々の残虐な行為を語らず、沈黙をとおしたままだろう。

 

その結果、必然的に表に出てくるのは、オットー・カリウスのような

勇敢で紳士的な

エリート兵士達の

美しい物語ばかり

になってしまうのだ。

 

そういう意味で、認知バイアスの観点から戦争が美化されるメカニズムを分析した宮崎駿の観察眼は、さすがに世界を代表するアニメ監督だけあって見事というほかないといえるだろう。

宮崎駿は、軍オタなのか?

なお、月刊モデルグラフィックス’94年5月号初出のマンガには、次のような会話がある。

ある読者

「宮崎さんは

 戦車のマンガなんかかいて、

 戦争好きなんですか?」

「戦車だけじゃないよ。

 大砲やヒコーキや軍艦も好きだよ」

「そういう人間だったの…」

この読者?の言葉に対して、宮崎駿を次のように弁解している。

「あのネー

 じゃなんですか

 

 エイズの研究者はエイズが好きで

 異常犯罪を研究している者は

 犯罪者とでもいうのかね

 

 戦車にかぎらず軍事一般は

 人間の恥部から来るものなのだ

 人類の恥部 文明の闇

 ウンコだ ゲロだ

 

 戦車が強そうとか

 カッコいいから好き

 なんてのはな

 ただの無知のせいだ

 初歩だ カケダシダ

 

 戦車も軍隊の愚劣さ

 民族の幼児性

 歴史の残虐さ

 人間の悲劇と喜劇

 そびすべての…

 結晶なのだ!!」

この宮崎駿の言葉は、ある程度理解できる。

 

なぜなら、私自身、ヒトラーやナチス、ドイツ軍の記事をよく書くが、別にヒトラーやナチスやドイツ軍が好きだからというわけではない。

 

なぜか、

人間の闇の部分

を知りたいという衝動に駆られるのだ。

 

だが、宮崎駿のマンガを読むと、どう考えても、昔ながらの古風な兵器に愛着を感じているように思えてならないのだ。

心の中では兵器が大好きだけど

頭では理論武装しまくって

兵器が大好きな自分の心を

必死で否定している

この一見、矛盾ともいえる態度について、かつて岡田斗司夫氏が、

宮崎駿の特徴

を見事に言い表した文章がある。

右手に兵器の模型を、

左手に美少女フィギュアを持ち、

 

口では

こんなの好きになったら

 ダメなんだよ!

と説教する。

 

それが宮崎駿という男だ。

というわけで、

宮崎駿の闇の部分

を知りたい人は、ぜひこの「泥まみれの虎」を読んでみてほしい。

 

また、ベルリン陥落後のドイツ人の脱出劇を描いた漫画「ハンスの帰還」も、

4号戦車への愛

にあふれた作品

として秀逸だ。

「ティーガー戦車隊」オットー・カリウス

さて、オットー・カリウスを紹介した以上、「泥まみれの虎」のネタ元である「ティーガー戦車隊」を紹介しなければならないだろう。

 

この本は当初、

西ドイツ軍機甲部隊

の教育用資料

として作成されたという。

 

その後、内容を全面的に改定し、一般向けの戦記読み物として出版された。

 

なお、カリウス自身、この本をティーガー薬局で販売し、ついでにサインもしてくれたという。

 

ところで、オットー・カリウスは、戦後、祖国ドイツのために命がけで戦ったドイツ国防軍の兵士達が、犯罪者同様の不名誉な扱いを受ける風潮に抗議するためにこの本を書いたという。

 

また、彼は、独ソ戦は、共産主義からドイツを守るためにソビエトと戦った戦争として正当化もしているそうだ。

 

オットー・カリウスの当時のポジションを、いまの日本の会社員にたとえれば、ちょうど、トヨタやソニーのような超一流企業で輝かしい活躍をしたエリート技術者のようなものだ。

 

しかしながら、日本において、そのような恵まれたエリートはごくごく少数にすぎず、彼らエリートから見えない底辺世界には、ブラック企業の社畜や、派遣社員として企業に使い捨てられている大多数の恵まれない日本人が存在することも忘れてはならない。

 

実際、宮崎駿氏が指摘するように、「ティーガー戦車隊」は、若干22才にしてドイツ最高の戦車を与えられた、選ばれしエリート戦車兵の回想録だ。

 

いわば、この回想録には、

生存者バイアス

精鋭フィルター

などの認知バイアスの魔法がかかっているのだ!

 

それゆえ、この回想録を読んで、これがドイツ軍のスタンダードな姿とは夢にも思ってはいけない。

 

よく考えてみてほしい。

 

あなたは、トヨタやソニーなどのエリート技術者の回想録を読んで、それが平均的な日本人サラリーマンの姿だと思うだろうか?

 

ごくごく普通のサラリーマンなら、島耕作シリーズのマンガを読んで、

「そんな虫のいい展開が

 あるわけねーだろ!

 どこの異世界の話なんだよ!」

と、突っこまずにはいられないだろう。

 

同じように、「ティーガー戦車隊」を読んだ平均的なドイツ国防軍の元兵士達も、おそらく同じような感想を抱くだろう。

平凡なドイツ国防軍の兵士

「いいよなあ

 カリウスは

 ティーガー戦車に乗れて!

 

 俺なんてパンツァー・ファウストで

 T34相手に突撃しろって

 上官からいわれてるのに

 

 エリート戦車兵様は

 ほんと、恵まれているよ!」

というわけで、「ティーガー戦車隊」も、

認知バイアスの魔法

かかった回想録

であることを忘れないでほしい。

「黒騎士物語」小林源文

「黒騎士物語」は、戦争劇画の第一人者である小林源文(もとふみ)の漫画だ。

 

月刊ホビー雑誌「ホビージャパン」上にて1982年〜1983年に連載されていた。

 

第二次世界大戦の東部戦線を舞台に、架空のドイツ戦車中隊「黒騎士中隊」の活躍を描いた作品だ。

 

主人公は、クルツ・ウェーバー上等兵だそうだが、上官のエルンスト・フォン・バウアー中尉の存在感が圧倒的すぎて、私自身、てっきりバウアー中尉が主人公だと勘違いしていた。

 

実際、小林源文先生によると、「黒騎士物語」は、もともとは「新兵物語」のつもりで描いたが、2話目にバウアー中尉を出したところ、

「こっちのほうがカッコイイじゃん」

と思って、気がついたら、バウアー中尉の物語になってしまったという経緯があるそうだ。

 

この作品は、ドイツ軍が主役のブンドド的な妄想を堪能するために生み出された作品といっても過言ではない。

 

「ブンドド」とは、小学生が戦闘機のプラモを振り回しながら、「ブーン!ドドド!」と叫んで遊ぶアレだ。

 

ちなみに、作者の小林源文先生は、絵描き仲間の上田信氏からピンチヒッターとして、「ホビージャパン」に連載を頼まれたのが、漫画連載のそもそものきっかけだそうだ。

 

1980年代当時、小林源文先生はサラリーマンをしており、午後8時に帰宅して、子供が寝た深夜から毎日午前3時頃まで漫画を描き、朝7時に起きて会社に出勤していたという。

 

劇画風のリアルかつ緻密な作風に加え、

BAKOOOM!

BUH−KOOM!

BTHOOM

BAFOOM

など、アメコミ風の独特な字体の擬音語が印象的な作品だ。

 

それゆえ、同人誌などでネタにされることも多かった。

 

また、

「俺のケツをなめろ!」

「教育してやる」

など数多くの名言を生み出した歴史的な名作だ。

 

「最強の狙撃手」アルブレヒト・ヴァッカー

「最強の狙撃手」は、東部戦線で257人を狙撃した伝説のドイツ軍のエーススナイパー、ヨーゼフ・アラーベルガー(通称ゼップ(Sepp))の壮絶な記録を描いたノンフィクションだ。

 

アラーベルガーは、1942年に18歳でドイツ国防軍に入隊し、山岳猟兵となる。

 

彼は、6倍スコープを装着した愛銃Kar98kを手に東部戦線で数多くのソ連軍兵士を倒し、1級および2級鉄十字章、黄金(1級)狙撃手章、騎士十字賞など、数々の勲章を手にする。

 

だが、「最強の狙撃手」がやばいのは、この世の生き地獄さながらの東部戦線の圧倒的な描写だ。

 

西部戦線をスポーツとすれば、東部戦線こそ本物の戦場といえるだろう。

 

また、狙撃銃で仕留めた敵の写真が掲載されているのも衝撃的だ。

 

あまりに凄まじい体験なので、フィクションではないかと思ってしまうほどだ。

 

「最強の狙撃手」は、極限状態の中で戦うスナイパーの生き様を描いた作品として第一級だ。

 

この本を読んだ後、しばらくの間は、悪夢のような東部戦線の数々の描写がトラウマとなって悩まされることは間違いない。

「ドイツ夜間防空戦」ヴィルヘルム・ヨーネン

「ドイツ夜間防空戦」は、ドイツ空軍の夜間戦闘機のエースパイロット、ヴィルヘルム・ヨーネン大尉(1921-2002)の回想録だ。

 

ヨーネンは、33機ものイギリス空軍の爆撃機を撃墜した功績で、1944年10月29日に騎士鉄十字章を授与されている。

 

ヨーネンの愛機はメッサーシュミットBf110の夜間戦闘機型G-4だ。

(↓)ドイツ空軍のメッサーシュミット Bf110 G-4型は夜間戦闘機だ。機首から突き出した4本のアンテナは、航空機搭載用の機上レーダーFuG202(エフウーゲー202 リヒテンシュタインBC)のアンテナだ。

開戦当時、ドイツ空軍総司令官のヘルマン・ゲーリングは「防空には高射砲」と豪語していたが、1940年5月真夜中にイギリス空軍の爆撃機がドイツ本土に飛来したとき、高射砲による防空が無力であることが明らかになった。

 

その後、イギリス空軍による大都市への夜間爆撃が盛んに行われるようになる。

(↓)ハンブルグを空襲するイギリス空軍の爆撃機アブロ ランカスター

1945年、焦土と化したハンブルグ

これに対し、ドイツ空軍は、夜間迎撃機で対抗した。

 

連合軍のドイツ各都市への無差別爆撃の容赦のなさと、それに立ち向かうヨーネンの夜間戦闘記録は、貴重なものといえるだろう。

 

また、史上初のジェット戦闘機Me262に試乗する話も載っていて大変貴重だ。

「ラスト・オブ・カンプフグルッペ」高橋慶史

「ラスト・オブ・カンプフグルッペ」は、第2次大戦末期のドイツ軍の無名の戦闘団(Kampfgruppe)の戦闘記録を描いた作品だ。

 

作者の高橋慶史氏は、大学卒業後、ベルリン工科大学エネルギー工学科へ留学し、その後、日本の電力会社に勤務している一介のサラリーマンだ。

 

だが、インターネットを駆使して、国内外の文献収集や調査、各国博物館や公文書館、海外の戦史研究家との情報交換により、数々の資料を集め、戦史資料として大変貴重なものとなっている。

 

大戦末期のドイツ軍は、部下のほとんどが敗残兵か未熟な補充兵からなる烏合の衆であり、しかも装備品や補給もお粗末なレベル、上官はといえば、もっぱら保身のため、現実の状況を無視した実行不能な命令を次々と発し、最終的な責任はすべて現場になすりつけるという最悪な状況だ。

 

まさしく、現代日本のブラック企業に通じるものがあるが、そんな絶望的な状況の中、決死の覚悟で戦った男達がいた。

 

「ラスト・オブ・カンプフグルッペ」は、そんな無名兵士達の物語だ。

 

ツボにハマる人は、たまらなくツボにはまる。

 

まさしく、そんな作品といえるだろう。

 

「鉄の棺―Uボート死闘の記録」ヘルベルト・A・ヴェルナー

「鉄の棺―Uボート死闘の記録」は、ドイツの潜水艦Uボートの艦長ヘルベルト・A・ヴェルナーの貴重な記録だ。

 

ドイツ軍といえば、やはりUボートは外せない。

 

Uボートは、商船約3,000隻、空母2隻、戦艦2隻を撃沈する戦果を上げ、ドイツ海軍の主力兵器として、連合軍を震え上がらせた。

 

実際、戦後イギリスの首相ウィンストン・チャーチルに

「私が本当に恐れたのは、Uボートの脅威である」

といわしめたほどだ。

 

だが、末期になると、ソナーや逆探知、航空機搭載レーダーによる電子戦、夜間に浮上航行して充電するUボートを照らす強力な探照灯のリー・ライトなど、連合国が潜水艦に対する有効な対策を編みだしたため、劣勢に追い込まれていった。

 

英国の当時の首相であったウィンストン・チャーチルは、このような状況の変化を、次のように語っている。

「対Uボート戦の末期(と初期)では立場が逆になった。

 狩られるのは商船ではなく、Uボートになったのである」

その結果、大戦全期を通じて、ドイツ海軍は、743隻ものUボートを失い、約3万人もの乗組員を失う結果となった。

 

Uボートは文字通り、

鉄の棺

となったのだ。

 

この作品では、連合軍に絶え間ない爆雷攻撃や、駆逐艦のソナーにつきまとわれる恐怖、航空機のレーダーやリー・ライトによるUボート狩りなどにより、僚艦が次々と沈められるさまは地獄そのものだ。

 

ジメジメと湿った艦内で連合軍の執拗な攻撃の中、極限状態を生きる海の男達の壮絶な記録を堪能してほしい。

「Uボート・コマンダー―潜水艦戦を生きぬいた男」ペーター・クレーマー

「Uボート・コマンダー―潜水艦戦を生きぬいた男」も数少ないUボートの生き残りの艦長であるペーター・クレーマーの記録だ。

 

航空機に襲撃されては急速潜航などは無意味で、たとえ間に合ったとしても、航空機から放たれる爆雷かホーミング魚雷に粉砕された。

 

充電のために浮上航行すれば、たちまち航空機に捉えられ、急速潜行しても航空機から放たれる爆雷に粉砕される。

 

一方、潜航すれば、ソナー類に捉えられて、やはり爆雷の餌食となる。

 

夜間に浮上すれば、はるか遠方からレーダーに捉えられ、レーダー搭載機に忍び寄られて、気づいた時には、リー・ライトを照射されて撃沈される。

 

だが、撤退すれば、連合軍の航空機が故郷ドイツの都市爆撃に向けられてしまうため、連合軍の航空力を釘付けにするために出撃せざるを得ない。

 

連合軍の圧倒的な物量と最新技術に押され、多大な犠牲を強いられ、狩られる運命にあることを知りながらも、Uボートで出撃する海の男たちの壮絶な物語だ。

 

そして、やはり潜水艦といえば、

野郎だけの男臭い世界

だ。

 

潜水艦乗りとして誇りをかけ、祖国を守るために命をかけた男達の不屈の物語がそこにある。

「戦争の真実」を知るには、敗戦国の戦記を読むのが一番

というわけで、今回、ドイツ軍が主人公の第二次世界大戦の小説・漫画・戦記の傑作10選を紹介した。

 

ところで、「最強の狙撃手」のレビューにおいて、次のような感想を目をひいた。

「戦争反対を100万回唱えるよりも、この本を一冊丸ごと読ませたほうが反戦につながるのではないでしょうか」

 

また、「泥まみれの虎」の巻末で、宮崎駿は次のように語っている(赤色は、私による)。

「じつは『コンバット』とか、アメリカの戦争映画が≪ドイツ軍≫っていう虚像を創ったわけですが、そういう意味では≪日本兵≫も虚像が創られてるんです。

 

 ただ、戦記ものは、負けた国の戦記のほうが、読んでて納得いくことのほうが多いっていうことはたしかですね」

本物の戦争を知るには、本物の戦争を体験した兵士たち、できれば敗戦国の兵士たちのリアルな戦記を読むのが一番だ。

 

というわけで、諸君も、本記事でとりあげた小説・戦記・漫画を読むことで、ドイツ軍の兵士たちが、あの絶望的な戦争をいかに戦いぬいたのかを学び、ガンダムの≪ジオン軍≫が地球連邦軍が作り上げた虚像にすぎないことを理解した上で、ガンダムの「THE ORIGIN」を見直し、充実したオタクライフを存分に満喫してほしい!

 

オタクパパより愛を込めて!

 

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この記事を書いた人

重度のコミュ障のため、友達ゼロのオタク親父。初音ミクと魔法少女をこよなく愛する。

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