実録!土方・工場系派遣ブラックバイト絶望記【底辺社畜】

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親愛なる読者諸君!

オタクパパだ。

今回は、黒歴史シリーズ第4弾だ。

この黒歴史シリーズは、私がこれまで体験してきた、さまざまな黒歴史をひたすら紹介するという誰得企画だ。

今回は、私が10代の頃、土方・工場系派遣会社のブラックバイトで激しく絶望した話を紹介したい。

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ブラックバイトとは

ここ最近、「ブラックバイト」という言葉を盛んに見かけるようになった。

ブラックバイトとはなんだろうか?

ここで、ブラックバイトについて知らない人のために、簡単に説明しておこう。

ブラックバイトの定義

ブラックバイトとは、「ブラック」なバイト(黒いバイト)のことであり、低賃金労働や残業代の未払い、パワハラやモラハラなど、違法性の高いアルバイトのことだ。

要は、ブラック企業のアルバイト版といってもいいだろう。

「ブラックバイト」という言葉自体は、2013年(平成25年)に、中京大学国際教養学部の大内裕和(おおうち ひろかず)教授が提唱して世間の注目を集めた。

ブラックバイトの実態を知るには、実例を見たほうが手っ取り早いだろう。

ブラックバイトの最近の事例

昨年、ブラックバイトを巡る全国初の訴訟が行われ、ブラックバイトの実態の一端が明らかにされたのは記憶に新しい。

 大手飲食チェーン店でアルバイトをした大学3年の男子学生(21)が4カ月間無休で働かされた上、店長に包丁で刺されたなどとして、運営会社側に未払いの残業代や慰謝料など計約800万円の支払いを求めた訴訟の第1回口頭弁論が14日、千葉地裁である。ブラックバイトを巡る訴訟は全国初とみられ、大学生は「怖くて辞

上の2016年9月13日付けの毎日新聞の記事によると、大手飲食チェーン店でアルバイトをした大学3年の男子学生(21)が、4カ月間無休で働かされた上、店長に包丁で刺されたなどとして、運営会社側に未払いの残業代や慰謝料など計約800万円の支払いを求める訴訟を提起したそうだ。

被害者の大学生によると、初めは1日約5時間、週4日勤務だったが、人手不足で午前0時の閉店後の片付けも任されるようになり、いつの間にか1日約12時間勤務になったそうだ。

バイトとしては異常なまでの長時間勤務に、大学生は「辞めたい」と訴えたそうだが、当時の女性店長に、

「懲戒解雇にする。

 懲戒解雇となれば就職もできない

「店が潰れたら4000万円の損害賠償を請求する」

と脅され、泣く泣く従わざるを得なかったそうだ。

その結果、月150時間超の深夜労働が3カ月も続き、120日以上もの間、非番の日がなかったため、大学生は、大学にほとんど通うことができず、一単位も取れなかったそうだ。

また、飲み放題の客が制限時間を過ぎても帰らなかった時には

「新しい客の注文を取れなかった損害」

という名目で10回以上にわたり損害を支払わされ、結局、約23万円も払わされたという。

上の事例は、サイコパスの店長が起こしたブラックバイト事件であるが、中には、ブラック企業よろしく、組織ぐるみでブラックバイトを強要している企業もあるそうだ。

ブラックバイトの特徴

ブラックバイトの特徴としては、以下のような特徴があげられる。

ブラックバイトの特徴

・休憩時間が少なすぎる

・上司や先輩、アルバイト仲間から暴言や暴力、嫌がらせを受ける

・会社の都合で希望していないシフトに無理矢理変えられる

・ノルマがきつい

・サービス残業をさせられる

・試験勉強のために休むことが認められない

・売れ残った商品の買い取りを強要させられる

・ミスをした損害や、仕事上のケガの治療費を自己負担させられた

・労働条件が募集時のものと異なる

・懲戒解職や損害賠償をちらつかせて脅す

参考

このように、ブラックアルバイトの実態は、ブラック企業の実態とそれほど違わないといえるだろう。

ブラックバイトが蔓延した背景

ところで、なぜ、このようなブラックバイトが蔓延するようになったのだろうか?

「ブラック企業ユニオン」代表の坂倉昇平氏によると、

「サービス業などで低賃金の学生に過剰な責任と長時間労働を押しつけ、利益を上げる構造がまん延している」

そうだ。

実際、上の訴訟を提訴した大学生に暴行したとされる元女性店長自身も、8カ月間、休み無く働いていたという。

このように、ブラック企業の社員自身が「ブラック」な部分をバイトに押しつけて加害者となるケースもあるのだ。

参考

【図解】ブラックバイトが増加する理由

このブラックバイトが生じる構造を分かりやすく図解すると、次のようになる。

大株主
(一番偉い。資本主義社会の神)

「配当金が少ない! 

 業績を上げないと社長を解任するぞ!」

 ↓ ブラックな圧力

雇われ社長
(一見偉そうだが、実は意外と立場が弱い)

「解任なんて困ったなあ。

 よし、正社員をリストラしまくって、残った正社員を低賃金で長時間労働させよう!

 これでV字回復だ!」

 ↓ ブラックな圧力

店長
(多額のローンのため「NO!」といえない正社畜)

「人少なすぎ! 予算少なすぎ!

 俺自身、もう100日以上も休んでねーよ! 

 よし、こうなったら、安いバイトを無給で散々使い倒して、ボロ雑巾のように捨ててやる!

 ↓ ブラックな圧力

バイト
(一番立場の弱い底辺社畜)

「長時間労働にサービス残業多すぎっ!

 とっくにライフがゼロよおおおっ!(泣)」

営利企業の負の部分が生んだ弱肉強食のブラック連鎖

このように、上の人間の私利私欲のために、一番立場の弱いバイトに営利企業の「ブラック」な部分がすべて押しつけられるのだ。

実際、上の構造を見て、弱肉強食の食物連鎖を思い浮かべた者も多いだろう。

実際、上が捕食者、下が被捕食者と考えると、しっくりくる。

営利企業の場合、ブラックな部分を自分よりも立場の弱い者に押しつける

ブラック連鎖

とでもいうべき現象が起こっているといえるだろう。

そして、営利企業におけるブラック連鎖の流れが店長(正社員)レベルに蔓延したとき、その企業はブラック企業と呼ばれ、非正規レベルまで蔓延したとき、ブラックバイトが発生するのだ。

このように、ブラック企業とブラックバイトは、営利企業における弱肉強食的なブラック連鎖の流れをどこまで適用するかの違いにすぎず、いずれも

営利社会における弱肉強食的な企業体質が生み出したという点で、本質は全く同じなのだ。

なぜブラックバイトを辞めないのか?

ここで、次のような疑問を感じる人もいるかもしれない。

「なぜ、辞めないんだ?

 正社員と違って、バイトなんて

 簡単に辞められるでしょ?」

だが、事はそう単純ではない。

上のブラックバイト訴訟の事例であげたように、ブラック企業は、懲戒解職損害賠償などの手段をちらつかせてアルバイターを脅して従わせる。

そのため、アルバイターは、心理的に追い詰められる。

「懲戒解職になって経歴にキズがついたら、もう二度とまともな会社に就職できなくなる!」

数千万円の損害賠償金なんて払えないよ!」

このようなアルバイターの心理につけこんで、ブラック企業は、アルバイターが辞められないように仕向けるのだ。

もはや、新興宗教の洗脳と同じといっても過言ではないだろう。

ブラックバイトの主な職種

ブラックバイトとしては、コンビニ店員や飲食店員、塾講師やアパレル店員などの事例がとりあげられることが多い。

実際、ネットで見られる事例のほとんどは、上であげた業種のものだ。

とすると、それ以外の職種はホワイトなのだろうか?

いや、そうでもない。

なぜなら私は、10代の頃、土方・工場系の派遣会社のアルバイトをしていたことがあるからだ。

土方・工場系バイトの情報が少ないのは、おそらく肉体労働がメインのため、体育会系の人間が多く、私のようにブログをシコシコ書いてネット上に拡散するような文化系タイプの人間が少ないのが一因かもしれない。

それゆえ、土方・工場系のブラックバイト経験は、ある意味、貴重な体験かもしれないと思い、本ブログにて公開することにした。

というわけで、本記事では、私の実体験をもとに、土方・工場系の派遣会社の壮絶なブラックバイト体験を紹介しようと思う。

なお、以下の内容は、私にとっては、黒歴史であるため、思い出すだけでも多大な精神的ダメージを受けるほど辛い体験だった。

なにより、動悸や息切れ、フラッシュバックなどのPTSDに悩まされながら、過去の記憶を思い出して執筆した。

それゆえ、ところどころ記憶違いがあるかもしれないので、その旨あらかじめご承知おき願いたい。

というわけで、私のブラックバイト体験談があなたの参考になれば幸いだ。

【実録】土方・工場系派遣会社のブラックバイト体験

私が、その土方・工場系派遣会社の存在を知ったのは、とあるバイト情報誌を見たときだ。

そこには、他のバイト情報に混じって、次のような文句が躍っていた。

急募! 未経験可!

日給15,000円!

職務内容:工事現場や工場での簡単な作業

特別な資格やスキルは必要ありません

アピールポイント:

清々しい日差しのもとで、気持ちよく身体を動かしながら、和気あいあいの職場で爽やかに働こう!

この募集広告に、私の目が釘付けになったのは、いうまでもない。

未経験可で、他のバイトよりも日給が抜きんでて高いというのが、何よりも魅力的だった。

当時は、大手メーカーの工場系のバイトでも、残業代込みで日給10,000円程度が関の山だったのだ。

ところで、私のこれまでの黒歴史体験を読んできた読者なら、ここで疑問に思う人もいるかもしれない。

なぜ、体育会系でもない、のび太並みの体力ゼロのひ弱なオタクが、コンビニや家庭教師等のバイトではなく、土方・工場系のバイトを選んだのか?

という疑問だ。

だが、体力ゼロだからこそ、体力を使わざるを得ない労働環境に身を置いて、ひ弱な肉体を鍛えようと考えて、土方・工場系のバイトを選んだのだ。

また、その当時の私は、

自分の苦手な分野に積極的に関わることで、魂が進化して覚醒(悟りの境地)に近づく

という、スピリチュアル的な考え方にはまっていたという理由もある。

そういうわけで、魂の修行になりそうな土方・工場系のバイトをあえて選んだのだ。

楽勝だった面接

さて、面接のほうだが、私がまだ10代で若かったのと、未経験可のためか、形ばかりの面接で合格した。

「これで日給15,000円もゲットできるなんて、楽勝じゃねーか!」

私は余裕たっぷりだった。

だが、これが、地獄のブラックバイトの始まりだったとは、その当時の私はつゆとも思っていなかった。

朝4時起床、始発電車に乗って出勤

土方は朝が早い

実際、遅くても朝7時半頃には現場に集合して、8時には作業を開始していた。

だが、この派遣会社では、まず派遣会社の事務所に出勤して、朝6時にその日の仕事の打ち合わせをしてから、正社員とアルバイターがワゴン車に分乗して、派遣先の現場に赴くという勤務形態だった。

そして、派遣会社まで約1時間なので、必然的に朝5時の始発電車で通勤する必要があった。

さらに、家から駅まで優に30分以上かかっていたので、毎朝4時に起床する必要があった。

朝4時台の真っ暗な中、信号が黄色に点滅したままの夜の横断歩道を自転車で駆けていく際にふと、

「オレ、何やってんだろ?」

と、疑問が心に浮かぶこともあったが、これも日給15,000円のためと思って我慢した。

だが、その希望も、最後には無残に裏切られることになるとは、そのときはつゆとも思っていなかった。

夜は夜で、日中の肉体労働で疲れ切っており、帰宅した後は何もやる気が起こらず、速攻で熟睡する毎日だった。

早寝早起きの健康的な生活といえば、聞こえはいいが、精神のほうはといえば、ソウルジェムが濁りまくって、今にも暗黒面に墜ちそうな毎日だったといえるだろう。

土方・工場系派遣会社の怪しすぎる元ヤン社長

さて、この派遣会社は、社長が見るからに怪しい男だった。

社長といっても、年はまだ若く、20代後半〜30代前半くらいの元ヤンキー風の男だった。

個性的な髪型に、やけに高級そうな時計を身につけており、最近YouTubeで大ブレイクしたピコ太郎をヤンキー風にした感じの、金ぴかキラキラな男だった。

(↓)土方・工場系派遣会社の社長は、元ヤン風の見るからに怪しい金ぴか男だった。

朝礼の日、社長が社員を視察に来るというので、我々アルバイターは緊張して直立不動の姿勢をとっていた。

元ヤン社長は、顔に張り付いたような人工的な笑みを浮かべつつ、アルバイターを見回し、一人一人に個別に話しかけた。

そのとき、私の左隣にいたのは、体育会系の体格のいい太っちょの20代前半くらいの男で、全身が健康的に日焼けしていた。

仮に、彼の名前を乃士(のし)さんと呼ぶことにしよう。

(↓)乃士さんは、その逞しい体格だけでなく、オーストラリアでヒッチハイクをしていた経験もあり、我々アルバイターの中でも一際存在感があった。

社長は、履歴書をマジマジと見つめながら、乃士さんに輝くような笑顔で話しかけた。

社長

「君、すごいね! 

 オーストラリアでヒッチハイクをしていたんだって?

 英語ぺらぺらなんだね!」

社長は、傍目からみても、乃士さんと力強い握手を交わし、乃士さんは誇らしげな笑みを浮かべた。

これが、土方・工場系派遣会社の若社長の人心掌握術なのだろう。

実際、社長が笑みを浮かべながらアルバイターに語りかけて握手するたびに、アルバイター達の目が輝いた。

さて、乃士さんの次は、私の番だった。

私は、社長が声をかけるのを緊張して待った。

社長は私の履歴を一瞥した。

そして次に、私の全身を舐め回すように見て、ごく一瞬、戸惑ったような表情をした。

「えーと、キミは・・・

 オタク君だね?

 えっと・・・よろしく」

そう簡単にいって、社長は、私と軽く握手した後、すぐに右隣の男に移った。

は? それだけ?

あまりのあっけなさに、私は拍子抜けした。

他のアルバイターには、どんなに短くとも、少なくとも3分以上は話しかけていたのに、私だけが軽くスルーされたのだ!

ひょっとすると、このとき、社長は、ひ弱なオタク少年にすぎなかった私の存在を場違いに思ったのかもしれない。

というのも、その場にいたのは、どれも元ヤンや体育会系のガタイのでかい筋肉質の男ばかりだったのだ。

(↓)ブラック土方・工場系派遣会社に応募してきたアルバイター達は、乃士さんを始め、どれも屈強そうな体育会系の男ばかりだった。

そういう体育会系の男達が集まる職場において、一人だけ私のようなオタク系の青白い人間がいたら、

なんなんだよ? 

お前は?

となるのも、無理はないのかもしれない。

社長からあからさまにディスられて、がっくりしている私を見て気の毒に思ったのか、朝礼後、採用担当のおっちゃんがこっそり私に耳打ちした。

「まあ、気にすんな!

 アイツ、今の間だけは

 羽振りがいいけどな

 そのうち消えるよ!」

は? 消えるって?

私が驚いて聞き返すと、おっちゃんはいろいろ興味深い話を聞かせてくれた。

「前の社長もな

 ベンツとかロールスロイスだのに乗って、たいそう羽振りが良かったが

 この前、会社の金200万円を持ち逃げして、ドロンしやがったんだよ!」

は? 前社長が会社の金200万円を持ち逃げした!?

突然の話に、私はびっくりたまげた。

そんな過去が、この土方・工場系派遣会社にあったなんて!

この時点で、ブラック臭がプンプンしていたのだが、その当時の私は、なぜか気にもとめなかった。

いま思えば、この話を聞いた時点で逃げるべきだったのかもしれない・・・。

ブラックすぎる偽装派遣

私の面倒を見てくれた担当の上司は、ローゼン閣下の麻生大臣のように口元が歪み、どことなく憎めないオッサンだった。

というわけで、以下、彼を麻生さんと呼ぶことにしよう。

麻生さんは、アルバイターを集めて釘をさした。

「いいか、おまえら!

 絶対派遣先で『アルバイター』なんて言うなよ!

 あくまで『正社員』っていうんだ。

 でないと、給料払わねえからな!」

は? なんでアルバイターなのに「正社員」って言わないといけないんだよ?

私達は、訝しく思いつつも、結局は、麻生さんの言葉に素直に従うことにした。

せっかく日給15,000円ものバイトをゲットしたのだ。

たった、言葉一つでそんな美味しい仕事をフイにしてしまうには、あまりにも惜しかった。

当時まだ10代そこそこの私は、

大人の事情というものを知るには、あまりに世間知らずだったのだ。

全身黒ずくめの矢沢永吉風のアブナイ運転手

さて、朝礼が終わった後、現場に向かうことになった。

運転手は、全身黒ずくめの矢沢永吉風の男だった。

そこで、彼を矢沢さんと呼ぶことにする。

私はワゴン車の後席に座り、同じく私の右隣には、矢沢さんの奥さんという、元ヴォーカル風の茶髪の30代後半くらいのオバサンが座ることになった。

また、ワゴン車の中央の席には、2人の元ヤン風の10代のアルバイター達が座ることになった。

矢沢さんは、運転中に、事あるごとに悪態をつくというクセがあった。

「息を吐くように嘘をつく」という言葉があるが、矢沢さんは、ハンドルを握ると、まさしく

息を吐くように悪態をつく

タイプの人間だった。

(↓)運転手の矢沢さんは、ハンドルを握ると豹変するタイプの人間だった。

実際、矢沢さんは事あるごとに悪態をつき、

「あのボケじじい

 さっさと信号渡れやコラ!

 グズグズしてっと、

 ひいてまうぞ!」

「あの野郎! 

 チンタラ走りやがって!

 わきまえろやクソボケが!」

と、始終こんな感じなのだ。

当然、現場に向かう車内が、殺伐とした雰囲気に包まれたのはいうまでもない。

コミュニケーション能力ゼロの元ヤンアルバイター達

そのとき、矢沢さんによって殺伐とした雰囲気を少しでも和ませようと、茶髪のおばさんが機転をきかせて、私に話しかけた。

「オタク君って、何歳?」

私「えっと、18歳ですけど」

「18歳! それなら、

 アンタ達と同い年じゃん!

 すごい偶然だね!」

そういって、茶髪のおばさんは、前席で煙を吹かしていた元ヤン風の2人組に話しかけた。

だが、2人共、なぜか黙ったままだ。

2人の沈黙に、茶髪のおばさんの顔がひきつる。

気まずい空気が流れ始めたので、私はすかさずおばさんをフォローした。

私「へー! 奇遇ですね!

  同い年だったんですか?

  よろしくお願いします!」

私は、できるだけ明るい声音で、元ヤンの2人組に挨拶をした。

だが、2人組の元ヤン風の若者達は、私の顔を見ることもなく、フロントガラスの外を眺めながら、ひたすら無言のまま煙を吹かし続けていた。

完全無視かよ!?

私も大概コミュ障のほうだが、年長者に紹介されて、挨拶もしないということはさすがに想像できなかった。

コミュニケーション能力ゼロの人間

に出会ったのは、まさしくこれが初めてだったといえるだろう。

あまりの展開に、茶髪のおばさんは、どうフォローしていいのか分からず、泣きそうな顔で、ただひたすら口をパクパクさせていた。

その結果、車内はさらに気まずい雰囲気になった。

ひたすら悪態をつく矢沢さんと、無言で煙を吹かしつづけるスーパー・コミュ障の元ヤン達、ショックのあまり、口をパクパクさせてわななく茶髪のオバサンに囲まれた車内で過ごすのは、

苦行そのものだったのはいうまでもない。

アバウトすぎる上司の指示

ようやく現場についた我々は、麻生さんの指示のもと、現場で作業を手伝うことになった。

だが、この麻生さんの指示がどうにもおかしいのだ。

例えば、麻生さんが、

「お前、手が空いてるなら

 アソコの男を手伝ってやれ!」

と、私に指示したので、忙しそうに作業している男のほうに歩いて行くと、

男「は? お前誰?」

と、言われるのだ。

私は、不可解に思いつつも、

私「BK派遣会社の者です。

  上司に言われて、手伝いにきました」

男「は? BK派遣会社? 

  知らねーよ、そんな会社! 

  オレの会社と全然関係ねーじゃん!」

私「え? でも、上司が手伝いに行けって・・・」

そういって、私が麻生さんのいた場所を振り返ると、

あれ? 

麻生さんがいない!?

麻生さんの姿を探して、キョロキョロあたりを見回す私を見て、不審そうな顔の男がとうとう業を煮やし、

男「おまえな!

  いきなり割り込んできて

  人の仕事を邪魔して

  迷惑なんだよっ!」

と、私を叱りつけたものだった。

また、麻生さんは、私を手招きして、現場の隅に置かれた機械を指さし、

「おい、お前! 

 ちょっと、そこのコンプレッサーを動かしてくれ!」

と、指示したこともあった。

私「え? でも、

  コンプレッサーなんて、

  見たことも触ったことも

  ないんですけど・・・」

私が躊躇していると、麻生さんは、イラついた調子で、

「適当にボタン押せば、

 動くだろ!」

といった。

私「でも、この機械、

  うちの物じゃないですよね?」

と、私がいうと、麻生さんは、

「そんなの黙っとけば、

 わかんねーって! 

 それじゃ、頼んだぞ!」

といって、私の肩をぽんと叩き、その場を去っていくのだ。

このように、麻生さんの指示は始終意味不明で、コンプレッサーの動かし方を教えることもなく、またそもそも、何のためにコンプレッサーを動かすのかという説明さえもないのだ。

なんでこんな人物が、上司をしていたのか未だに理解できない。

いま思えば、麻生さんは、アルバイターに無駄な苦痛を与えることが生き甲斐の、

一種のサイコパス

だったのかもしれない。

もちろん、麻生さんの姿が見えなくなったあと、私がその場をこっそり抜け出したのはいうまでもない。

派遣先のブラックすぎる下請け零細工場

さて、土方系の現場の話をしたところで、次は工場系の話をしよう。

私が派遣された先の工場は、いかにも古びた下請けの零細工場といった感じの工場だった。

土方系の現場では、あちこち歩き回って正社員の手伝いをしたものだが、工場系の現場では、作業台に立ったまま単純作業するのが主流だった。

工場の中には、さまざまな機械が置かれていたが、その中には、一つ扱いを間違えると、身体の一部が潰れたり、切断されたりする、危険な機械もあった。

その工場では、我々アルバイターの中で最も信頼の厚い乃士さんが、その危険な機械で作業することが決められた。

乃士さんは、大抵のことでは弱音を吐かない、太った陽気な男だったが、工場長による機械の操作法の説明を聞いたとき、彼の表情は見る間に曇っていった。

工場長はいった。

その機械の扱いには、

 くれぐれも気をつけること!

 それ、下手すると、

 指切断するから!」

乃士「は? 指切断って?」

「ウチの工場で、結構いたんだよ!

 扱いを間違えて、

 そのままザクってね!」

工場長は笑いながらいった。

 「だから、この作業、

  ウチの工場の者は

  誰もやりたがらなくて困ってたけど、

  君のような頼もしい派遣の人が来てくれて本当に助かったよ!

工場長の言葉を聞いて、ふと私は、

なぜブラック派遣業に需要があるのか、その意味がようやく分かった

ような気がした。

工場長は続けた。

  「ということで、いちおう

   説明の義務は果たしたから

   後はよろしく!(笑)」

工場長は笑いながら、乃士さんの肩をぽんと叩いた。

そのときの工場長の本音を要約すると、こんな感じだろう。

「事前の警告義務を果たした以上

 仮に、キミの指が切断されて、

 後で文句をいっても無駄だよ!

 指を切断したキミがマヌケなだけだから!」

実際、作業中に指が切断された場合、一体、誰が保証してくれるのだろうか?

こんな零細工場が責任をとってくれるとも思えないし、ましてや、派遣会社の元ヤン社長が責任をとってくれるとも到底思えない。

そう考えると、いくら15,000円の日給をもらえたとしても、

指が切断されたら割に合わないのはいうまでもない。

工場長から事実上の引導を渡された後、私は、いつも自信満々の乃士さんが

青ざめた顔をして、かすかに肩が震えていたのを覚えている。

(↓)恐怖に震え、硬直する乃士さんの姿は、ある意味哀れだった。

私は、ちょっぴり乃士さんに同情したが、同時に

自分でなくてよかった!

と、心の底から感謝していたのも、否定できなかった。

その後、工場で作業をしている最中に、乃士さんが

「なんでオレがこんなことやらないといけないの?

 こんなところにいたら、

 命がいくつあっても足りないよ・・・」

と、ブツブツつぶやくのが聞こえた。

終業時間になったとき、乃士さんの指は無事切断されずに済んだが、乃士さんの顔は青ざめたままで、もとの元気はどこへやら、すっかり無口で陰気な男に変貌していた

その後、我々アルバイターの期待の星だった乃士さんが2度と派遣会社に出勤してこなくなったのはいうまでもない。

ブラック工場に出稼ぎに来た外国人労働者達

ところで、この手のブラック工場に多かったのが、中国人やタイ人、ベトナム人などの外国人労働者だ。

これらの外国人労働者は、日本人労働者よりもはるかに低賃金で雇えるためなのか、派遣先の工場でよく見かけた。

特に、中国人は顔つきが日本人っぽい人もいるので、話しかけて中国語で返ってきたときにビックリすることもしばしばだった。

私は、コーエーのシミュレーションゲーム「三國志」をプレイしていた関係もあって、中国人の労働者を見かけるたびに、

「張飛! 

 関羽! 

 諸葛亮孔明!」

などと話しかけて、相手の苦笑を買っていたものだ。

タイ美人姉妹の危険な誘惑

ところで、工場で働く外国人労働者の中には、女性もいた。

まだ若いのに、わざわざ海を越えて日本のブラック工場まで出稼ぎに来るとは、そんなに日本での労働は現地よりも稼げるのかと、私は思ったものだ。

私が派遣された工場では、親子で出稼ぎに来ているタイ人もいた。

父親は40代くらいのタイ人の親父で片言の日本語を話すことができたが、私自身、コミュニケーションをとろうとしたが、会話が長く続かず、苦労したのを覚えている。

そのタイ人の親父には、美人の姉妹がいて、色々な意味でアルバイターの間で話題になっていた。

そんなある日、いつものように、私は15分程度の短い休憩時間の間、派遣会社の正社員と会話をしていたときのことだ。

正社員の一人が、大型トラックの免許を持っているという20代後半くらいの、大槻ケンヂを残念にした感じの縮れ髪のオッサン(以下、大槻さん)で、甘い缶コーヒーが大好物だった。

土方系の男には、どういうわけか、やたらと甘い缶コーヒーが好きな男が多かった

これはちょっとした謎だったが、ひょっとすると、肉体労働の疲労にきくのかもしれない。

会話がタイ人労働者の話になると、突然、大槻さんが小指を立てて、私に話しかけた。

「なあ、あのタイ人の姉妹、

 けっこう可愛いだろ?」

私「はあ、そうでしたっけ?」

当時、すでに2次元美少女にしか興味のなかった私は、適当に相づちをうった。

「聞くところによると、

 あの姉妹にお願いすると、

 タダでさせてくれるそうだぜ!」

大槻さんは、鼻の下をのばしてニヤニヤしながらいった。

私「タダって、

  まさかアレのことですか?」

私は、ビックリして聞き返すと、大槻さんは大声でいった。

「もちろん、

 アレに決まってるだろ!」

大槻さんは笑みを浮かべつつ、

「どうだ? 

 お前も一つ、

 あのタイ人姉妹に

 お願いしてみるか?」

この申し出を聞いて、私は想像した。

そのとき、私が想像したのは、

タイ美人姉妹に手をかけたが最後、

タイの格闘技・ムエタイで鍛えた

タイ人のマッチョなお兄さん

因縁をつけられて、

骨の髄まで大金をむしり取られる

悪夢のような光景

だった・・・。

(↓)タダほど怖い物はない。この世は、ある意味、理不尽な「等価交換」で満ちあふれているのだ!

しばらく妄想した後、私は大槻さんにいった。

私「いえ・・・

  せっかくの申し出ですが、

  やっぱり辞めときます」

私の言葉に、大槻さんは、さぞかし意外だという顔つきでいった。

「なんでだよ? 

 こんなうまい話、滅多にないぞ? 

 よく考えろ!

 タダだぞ! タダ!

 タダで美人の女の子と

 楽しいことができるんだぞ!」

やけにしつこく食い下がる縮れ髪のオッサン。

だが、その当時、三次元に興味のなかった私は首をふった。

 私「いえ、子供の頃、

   田舎のバアちゃんがいつも

  タダほど怖い物はないぞ!

   と、口癖のように言っていたので・・・」

もちろん、私はちょっとした冗談のつもりで言ったつもりだった。

だが、私の言葉を聞いた大槻さんをはじめとする正社員の連中は、

なぜかみな、急に神妙な顔つきになって黙り込んだ

その光景を見て、逆に驚いたのは、私自身だった。

その光景はさながら、

お通夜のようだった

タダほど怖いものはないって話、

マジだったのかよ!?

その日、私達アルバイターが派遣会社の正社員の言葉を絶対に信用するまいと誓ったのは、もちろんいうまでもない。

給与明細を見て激しく絶望・・・

さて、これまで散々な目にあったブラックバイトの体験談を話した。

だが、ここで、次のように思った人もいるかもしれない。

「でもさ、それで日給15,000円も

 もらえるなら別にいいんじゃね?」

私もそう思っていた。

だが、派遣会社から渡された給与明細を見て、その考えは180°覆された。

給料少なすぎじゃね?

そう、どう計算しても、

日給が7,500円くらいしかないのだ!

朝4時に起床してフルタイムでヘトヘトになるまで働いて、日給7,500円。

過酷な肉体労働であることを考えれば、どう考えても割に合わなかった。

当然、私を含めたアルバイターは、怒りのあまり、社長に直談判しに行った。

だが、怒りにあふれたアルバイター達を前に、元ヤン社長はすました顔で、机の引き出しの中から労働契約書を取り出して机の上に放り投げた。

労働契約書には、細かい字で次のように書いてあった。

なお、日給は15,000円であるが、1月の労働日数が20日未満の場合は、1日7,500円が支払われ、残りの日給7,500円分は、1月の労働日数が20日以上の場合に、まとめて支払われるものとする。

は? どーゆーこと?

社長はいった。

「君たち、契約書をちゃんと読んだかな?

 詐欺っていうけどさ

 オレは詐欺なんて全然していないから!

 契約書を読まなかった君たちが悪いんだよ!」

そういって、元ヤン社長は、ヤニですっかり黄色くなった歯を見せて、勝ち誇ったように笑った。

たしかに、契約書の細かい部分にまで目を通していなかったのは落ち度だった。

その点では、アルバイターのほうも悪いといえるだろう。

だが、問題なのはその点ではない。

契約書に書かれた条件は、どう考えても無理があった。

なぜなら、土方は雨になると、その日は休みになるからだ。

実際、朝6時に派遣会社に集合したものの、雨が降り出したため、急遽休業になり、通勤費を無駄にしてしまったことも往々にしてあったのだ。

そのため、春休みの期間とはいえ、天候を考えると、月20日以上も現場に出られるのは、ある意味、奇跡的ともいえた。

要するに、契約書の条件は、

実質的に実現不可能なもの

だったのだ!

また、仮に月20日以上現場に出られたとしても、この元ヤン社長が素直に残りの給料を支払うか、かなり怪しいといえた。

なぜなら、一人あたり15万円以上もの現金を一括払いしなければならないのだ。

15人のアルバイターなら合計200万円を超える金を用意する必要がある。

この零細ブラック派遣会社にそのような余裕があるなどとは到底思えなかった。

いや、仮に200万円以上もの資金を用意したところで、前社長のように持ち逃げされる可能性も高かっただろう。

いや、その持ち逃げされた200万円ってまさか・・・。

私はそれ以上、考える気にもなれなかった。

また、契約書のなお書きに細かい文字で支払い条件を書くなど、小汚い策を弄する元ヤン社長のことだ。

20日以上の条件を達成しそうになる前に、無理矢理休業にして条件を達成できないようにするくらい、この社長にとっては朝飯前だろう。

結局、私を含めアルバイター全員が派遣会社に騙され、募集時の半額の給料で妥協するしかなかった。

もちろん、私が後で泣き寝入りしたのはいうまでもない。

もうイヤッ

 こんなバイト!

【対策】ブラックバイトから身を守る方法

以上、私のブラックバイト体験談を紹介したが、このようなブラックバイトから身を守る方法はあるのだろうか?

私が若かった頃は、ブラックバイトの存在があまり認識されていなかった事情もあり、ブラックバイトの被害者は泣き寝入りするしかなった。

だが、幸いなことに、現在は、「ブラック企業対策プロジェクト」や「ブラックバイトユニオン」など、ブラックバイトに苦しむ人を支援する心強い組織がいくつもある。

これらの組織はブラックバイトの豊富な事例を把握しているため、これらの組織に連絡して助けを求めるのがいいだろう。

また、岩手大学のキャリア支援課では、ブラックバイトから身を守るための「ブラックバイトへの対処法」という冊子もPDFで配布されている。

岩手大学キャリア支援課
ブラックバイトへの対処法

ちなみに、この冊子は、ブラック企業被害対策弁護団の鈴木絢子弁護士や、中京大学国際教養学部の大内裕和教授が執筆しており、ブラック企業対策プロジェクト共同代表の今野晴貴氏が作成協力をしており、豊富な経験に基づく有用なアドバイスが参考になるだろう。

というわけで、あなたも私の体験談を反面教師として、高い給料や甘い言葉で誘うブラックバイトに騙されることなく、健全なホワイト企業を見極めて応募し、アニメの円盤代や美少女フィギュア代をたっぷり稼いで、オタク業界の優れたクリエイター達に感謝しつつ、彼らに利益を還元し、充実したオタクライフを存分に満喫するようにしてほしい!

オタクパパより愛を込めて!

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