親愛なる読者諸君!
オタクパパだ!
今回は、第二次世界大戦中にアメリカの戦略情報局OSS(現CIAの前身)のスパイが実際に計画していたという「ヒトラー女性化計画」について紹介したい。
ヒトラー女性化計画とは
「ヒトラー女性化計画」は、悪名高きナチスドイツの独裁者であるアドルフ・ヒトラーに女性ホルモンを投与することによって、文字通り、
ヒトラーを女性化しようとした計画だ。
な、なんだってーーーっ!
ヒトラーを女性化する理由
ところで、なぜヒトラーを女性化する必要があったのか?
ヒトラーほどの悪名高き独裁者ともなれば、そんなまだるっこいことをせずに、むしろゴルゴ13級の凄腕のスナイパーを雇って、普通に眉間を撃ち抜いたほうが、はるかに手っ取り早いと思うだろう。
だが、事はそう単純ではない。
なぜなら、当時のヒトラーは、ドイツ国民に非常に人気があり、連合軍の陰謀によってヒトラーを倒してしまった場合、総統に心酔しきった当時のドイツの紳士淑女が、次のような反応を示す可能性がきわめて高かったからだ。
ドイツの紳士
「連合軍の奴ら、正攻法でドイツに勝てないからって、総統閣下を陰からコッソリやるなんて、卑怯な奴らだ!
こうなりゃ、総統の遺志を継いで、あくまで徹底抗戦だ!」
ドイツの淑女
「連合軍の陰謀にやられても、最期まで信念を貫くなんて、総統ってステキ!
私たちも総統の崇高なる理念を守るために、徹底して戦うわよ!」
このように、スナイパーを雇ってヒトラーを倒してしまったとしても、総統閣下は、理想半ばにして連合軍の陰謀に倒れた「英雄」として神格化され、怒り狂ったドイツ国民がヒトラーの思想をかえって強く支持してしまうおそれがあるのだ。
このような展開は、戦争の早期終結と平和的な戦後処理を望む連合軍にとって、なおさら不都合だろう。
そこで、第二次世界大戦中にアメリカの諜報機関OSS(現CIAの前身)は、それまでの方針を転換して、ヒトラーを生かしたまま権威を失墜させるべく、
ヒトラーを女性化して、ドイツ人を激しく萎えさせる作戦
をとることにしたというわけだ。
な、なんだって———!
総統閣下は女性的?
OSSは、精神科医などにヒトラーの性格分析を依頼し、その結果、ヒトラーが女性的な性格を有するとの分析結果を得た。
たとえば、次のような感じだ。
ヒトラーはおしゃべり好きだ
ヒトラーは責任を人のせいにしやすい
ヒトラーは嫉妬深い
ヒトラーは主婦のように運動を好まない
ヒトラーは子供好きだ
いかにも女性への偏見に満ちた分析結果だが、1942年当時は、このようなひどい偏見がまかり通っていたのだ。
OSSはこの分析結果を受けて、ヒトラーに女性ホルモンを投与することにより、ヒトラーの声を女性のようなソプラノ声にし、トレードマークのチョビ髭を落とす計画を立てたそうだ。
作戦が成功した暁には、総統閣下は女体化し、次のように変貌しているかもしれない。
総統閣下
「ねえ!
ちょっとイメチェンしたくて、チョビ髭落としてみたの!
お髭のない私って、ステキかしら?
どう、ゲッベルスちゃん?
てへぺろ☆(・ω<)」
チョビ髭もなく、ソプラノ声のヒトラーを見たゲッベルス、いや、ドイツ国民は、さすがに
萎えまくって戦意を激しく喪失するにちがいない!
具体的な作戦内容としては、熱や水を加えても変成しない高濃度の女性ホルモン液を開発し、ヒトラーの食事に使われる農園を特定し、農園で働く反ナチス思想の小作人を買収して、女性ホルモン液をヒトラーが食べる野菜に振りかけるというものだった。
ヒトラー女性化計画の結末
だが、残念なことに、ヒトラー女性化計画は、顕著な効果をあげられなかったという。
OSSの記録では、この計画は小作人が裏切ったことにより失敗したとのことだが、戦史作家の児玉 襄(こじま のぼる)氏によれば、これは将来の工作に備えて成功をごまかすための嘘だそうだ。
その証拠に、ヒトラーは1942年以降、体調が急速に悪化しているのだ。
もう一つ、ヒトラーの女性化が成功しなかった理由として、ヒトラーの主治医であるテオドール・モレル医師が、ヒトラーの活力を増強すべく、男性ホルモンの一種であるテストステロンを処方していたからだという説もある。
すなわち、同時期に女性ホルモンと男性ホルモンの両方が投与されたため、うまい具合に中和されてしまったのか、効果が出なかったというのだ!
この説が本当だとすれば、ヒトラーを爆弾で亡き者にしようとする数多くの陰謀がことごとく失敗に終わったヒトラー、まさしく
凄まじいまでの悪運の持ち主といえるだろう。
参考
「ヒトラー女性化計画」の真偽を検証する
さて、このように、ヒトラーほどの悪名高き独裁者ともなれば、さまざまなエピソードに事欠かない。
だが、この「ヒトラー女性化計画」は、はたして真実なのだろうか?
「そんなふざけた話、嘘に決まっているだろ!」
「どうせ海外の怪しげなタブロイド紙が書いた創作記事だよ!」
そう思う人も多いかもしれない。
もし、「ヒトラー女性化計画」が真実であるなら、その拡散経路は、おそらく次のようになるだろう。
「ヒトラー女性化計画」が真実であるとした場合の拡散経路
1.OSSの作戦担当者や諜報員の証言や作戦報告書(一次ソース)
↓
2.一次ソースをもとに出版された本や研究者の情報(二次ソース)
↓
3.一次ソースや二次ソースをまとめたネットの情報(三次ソース)
上の拡散経路が正しいとすれば、「ヒトラー女性化計画」について、数多くの欧米の文献や情報が存在するはずだ。
そこで、検索エンジンにおいて、「Hitler feminization(ヒトラー 女性化)」というキーワードで調べてみることにした。
結果は、次のとおりだ。
引用 Googleの検索結果
驚いたことに、検索結果には、イギリスの高級紙である「デイリー・テレグラフ」のウェブページをはじめとして、「ヒトラー女性化計画」について報じる数多くの海外ページが出てきたのだ!
これらのページを詳しく見てみると、海外ページの報道は、日本のWikipediaとは若干異なることがわかる。
例えば、Wikipediaでは、アメリカの諜報機関OSSが「ヒトラー女性化計画」を遂行したことになっているが、カーディフ大学の生物学教授ブライアン・J・フォード教授によれば、イギリスの情報機関MI5(*注1)のスパイが計画を実行したという。
MI5(エム・アイ・ファイブ)は、イギリス国内の治安維持を担当する英国情報機関である。
なお、「007」シリーズのジェームズ・ボンドや「パタリロ」のバンコラン少佐は、イギリス国外の秘密情報の収集・情報工作を担当する英国秘密情報部MI6(エム・アイ・シックス)に属する。
また、「ヒトラー女性化計画」は、海外では「エストロゲン計画」(エストロゲンは女性ホルモンの一種)と呼ばれているそうだ。
さらに、ヒトラーの食事に毒を盛らなかった理由も、日本のWikipediaの記述と異なる。
海外ソースによると、ヒトラーには毒味役がついており、食事に毒を入れてもすぐにバレてしまうために毒を盛らなかったという。
そのため、MI5は、無味であり、効果が遅くて毒味役が気づかないエストロゲンを採用したそうだ。
なお、この「エストロゲン計画」の詳細は、フォード教授の著書「Secret Weapons: Technology, Science and the Race to Win World War II (General Military) 」に記載されている。
参考
歴史を捏造して手柄を横取りするイギリス人教授?
ところで、MI5のスパイがヒトラー女性化計画を実行したという説には反論もある。
なぜなら、上でとりあげたフォード教授の著書「Secret Weapons」には、Wikipediaからコピペしたようなウソ情報や、実在しない日本軍の773部隊についてもとりあげられているため、ソースとしての信頼性が低いという指摘があるからだ。
そもそも、フォード教授は、歴史学や軍事学の教授ではなく、生物学の教授なのだ。
ヒトラーについては、まったくの門外漢なのである。
日本の教授でも、専門外の話題になるとトンチンカンな発言をする教授が多いが、それと同じパターンだというのだ。
ヒトラー女性化計画のオリジナルソース
その証拠に、「ヒトラー女性化計画」のオリジナルのソースは、アメリカOSSの研究開発ディレクターであったスタンレー・P・ラベルの1963年の著書「Of spies and Stratagems」といわれている。
以下、ラベルの言葉を引用しよう。
My favorite attack on Adolf Hitler was a glandular approach. America’s top diagnosticians and gland experts agreed with me that he was definitely close to the male-female line. His poor emotional control, his violent passions, his selection of companions like Röhm, all led me to feel that a push to the female side might do wonders. The hope was that his moustache would fall off and his voice become soprano.
Hitler was a vegetarian. At Berchtesgaden, the vegetable garden that supplied his melodramatic Eagle’s Nest on the rocky peak had to have gardeners. A plan to get an O.S.S. man there, or an anti-Nazi workman, was approved. I supplied female sex hormones and, just for variety’s sake, now and then a carbamate or other quietus medication, all to be injected into der Führer’s carrots, beets or whatever went up to his larder.
Since he survived, I can only assume that the gardener took our money and threw the syringes and medications into the nearest thicket. Either that or Hitler had a big turnover in his “tasters”.
引用 Stanley P Lovell「Of spies and Stratagems」
上の記述において、ラベルは、OSSの研究によると、ヒトラーはとりわけ中性的、すなわち、「男性と女性の中間のラインに近い」と述べている。
そして、ヒトラーをほんの少しだけ中性のラインから「女性」の領域に落としてやれば、ヒトラーはドイツ人の支持を失い、戦争は連合軍の勝利に終わるだろうと、スタンレーは考えたそうだ。
具体的な作戦内容としては、ドイツ南東部バイエルン州のベルヒテスガーデンの近郊オーバーザルツベルクにあったナチス・ドイツ総統アドルフ・ヒトラーの別荘イーグルスネスト「鷲の巣」に野菜を出荷していた庭師を買収して、人参やビートにエストロゲンを注入するというものだった。
また、作戦が失敗に終わった理由として、スタンレーは、買収したはずの庭師がOSSから賄賂だけ受け取ってそのままポケットに入れ、エストロゲンの入った注射器を藪の中に捨てて何もしなかったのではないかと推測している。
エストロゲンは無味であり、すぐに顕著な効果も現れないため、庭師が実際にエストロゲンを人参に注入したかどうかなど、OSSには知りようもないのだ。
あるいは、ヒトラーの毒味役がエストロゲンの存在に気づいたのかもしれない。
いずれにせよ、上の記述には、フォード教授がとりあげたMI5もイギリス人の「イ」の字も出てこない。
作戦を実行したメンバーは、あくまで「O.S.S. man」なのだ。
このことからも、フォード教授は、スタンレーが語ったOSSの作戦をイギリス人のスパイが実行したことにしたという可能性が高いといえる。
事実は小説よりも奇なり
以上、ヒトラー女性化計画の顛末を紹介した。
上でとりあげた「ヒトラー女性化計画」の拡散経路をまとめると、次のようになる。
「ヒトラー女性化計画」の実際の拡散経路
1.アメリカOSSのディレクター、スタンレー・ラベルの1963年の著書(一次ソース)
↓
2.一次ソースをもとに2011年に出版されたイギリスのフォード教授の著書(二次ソース)
↓
3.一次ソースや二次ソースをまとめたテレグラフやWikipediaの情報(三次ソース)
このように、計画を立てたOSSのディレクター本人が「ヒトラー女性化計画」について語っていることから、
「ヒトラー女性化計画」は創作ではなく、真実である可能性が高い
といっていいだろう。
これぞまさしく「事実は小説よりも奇なり」という実例といえる。
ヒトラー女体化アニメに期待!?
いずれにせよ、この事実がきっかけとなって、
ヒトラーが女性キャラ化して活躍する作品が生まれるかもしれない。
実際、幼女が主人公になって大戦間期のヨーロッパを戦う作品「幼女戦記」が生まれるくらいだ。
そのような可能性が皆無とはいえないだろう。
というわけで、諸君も、イギリス人も歴史を捏造して人の手柄を横取りするということがあるというネットの闇に騙されないよう、必ず一次ソースを調査するようにして真相を学び、充実したオタクライフを存分に満喫するようにしてほしい!
オタクパパより愛を込めて!
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