親愛なる読者諸君!
オタクパパだ!
今回は、
大人のための
アニメジャズ入門
だ。
気分がひどく落ち込んだとき、アニソンなどの明るくてポップな曲を聴いて、元気になったことはないだろうか?
一方、精神がひどく落ち込んだときや、一人で静かに思索したいとき、アップテンポでハイテンションなアニソンが、かえってうるさく邪魔に感じることもある。
そんなとき、私は、しっとり落ち着いた大人向けのアニメジャズを聴いて、心を癒やすことが多い。
というわけで、これまで1000曲以上ものアニメ関連のジャズ曲を聴いてきた私が、
しっとり落ち着いた
大人向けのアニメ
ジャズアルバム
「アニメッシ」
(Animessi)
を紹介したい。
欧州ジャズピアノ界の貴公子がアニメを題材としたアニメジャズアルバムを作った動機
前回の「大人のためのアニメジャズ入門」では、イタリア生まれの天才ジャズ・ピアニストにして、欧州ジャズ・ピアノ界の貴公子たる
ジョバンニ・ミラバッシ
(Giovanni Mirabassi)
のディープなオタク愛について紹介した。
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ところで、ジョバンニ・ミラバッシほどの天才ジャズ・ピアニストが、なぜ
アニメ音楽だけの
ジャズアルバム
を作ろうと思ったのだろうか?
その理由について、ミラバッシは次のように語っている。
「親愛なる日本の友人たちへ
宮崎駿さん、高畑勲さんといった優れたクリエーターの方たちが制作された素晴らしいアニメーション作品に使われている音楽を録音する事は長い間の私の夢でした。
それが今回実現した事を皆様に報告出来る事はこの上ない喜びであり、大きな誇りでもあります。CDは1月末に日本で発売されます。
そして、その音楽をライブで聴いていただく機会が3月にあります。
この時は日本全国を演奏して廻る事になると思いますので、いろいろなところで皆様とお会いし、この音楽を聴いていただく事になると思います。
私自身もとても楽しみにしています。」──ジョバンニ・ミラバッシ
この言葉からも分かるように、日本のアニメ音楽を録音することは、アニメ好きのジョバンニ・ミラバッシにとって、長年の夢だったのだ。
また、ジョバンニ・ミラバッシは、次のようにも語っている。
「いつも、自分が好きな音楽をみんなと分かち合いたいという気持ちで演奏しています。
アニメには美しいメロディの曲も多いし、みんなで分かち合いたい。
それが『アニメッシ』をつくった理由だし、コンサートでアニメの曲を演奏する理由です」
引用「CD Journal」インタビュー
このように、
「美しいアニメ曲の素晴らしさをみんなと分かち合いたい」
という、アニメオタク魂というべき精神が、アニメ曲のアルバムを製作するジョバンニ・ミラバッシの大きな動機といえるだろう。
だが、「日本のアニメ曲アルバムをリリースしたい」という熱き思いがあったものの、最初の頃は、レコード会社をはじめとして、周囲からなかなか理解を得られなかったそうだ。
これまでのジョバンニ・ミラバッシの評価の高い実績からすれば、アニメ曲集という一種の「企画物」を出すことには、リスクがあった。
ジョバンニ・ミラバッシが「売れ線」に走ったのではないか?
と、悪くとらえられる恐れがあったからだ。
だが、ここ近年、日本のアニメが世界で高く評価されるようになったことが、アニメ曲のカバーに対する考え方を大きく変えることになった。
ある日、パリの有名なジャズ・クラブのオーナーから、
「新年にふさわしい、何か特別なプログラムをやってほしい」
と言われたことがきっかけで、ジョバンニ・ミラバッシは、アニメ曲ジャズアルバム「アニメッシ」の企画のオファーを受けることができたのだ。
実際、ジョバンニ・ミラバッシは「アニメッシ」について、
「15年前から実現させたいと温めていた企画」
と語っている。
このようにして、日本のアニメを心の底から愛するイタリア生まれのアニメオタクによる最高のアニメジャズアルバム「アニメッシ」が生み出されたのだ。
アニメ曲ジャズアルバム「アニメッシ」のレビュー
というわけで、ジョバンニ・ミラバッシによるアニメ・ジャズ・アルバム
「アニメッシ」の
各曲のレビュー
を行っていきたい。
実は、これらの曲は、ジョバンニ・ミラバッシ自ら、全曲を選曲しているそうだ。
【1曲目】君をのせて
「アニメッシ」の第1曲目は、宮崎駿監督の名作「天空の城ラピュタ」のテーマ曲「君をのせて」だ。
ちなみに、ジョバンニ・ミラバッシは、宮崎駿監督と作曲家の久石譲の出会いをイタリア映画に例えると、
「フェデリコ・フェリーニ監督と作曲家ニーノ・ロータの出会いに匹敵する」
と語っている。
フェデリコ・フェリーニ監督は、「映像の魔術師」の異名を持ち、20世紀の巨匠とまで呼ばれたイタリアの映画監督だ。
一方、ニーノ・ロータは、かのフランシス・フォード・コッポラ監督の「ゴッドファーザー」の音楽を手がけたミラノ出身の天才作曲家だ。
それゆえ、イタリア人にとって、このたとえはまさしく、最高の賛辞といってもいいだろう。
ところで、「君をのせて」のジャズ・アレンジだが、
ミラバッシ節
とでもいうべき、ジョバンニ・ミラバッシ独特のアレンジが特徴だ。
これについて、ジョバンニ・ミラバッシは、次のように語っている。
「ビル・エヴァンスがディズニー・アニメの音楽〈いつか王子様が〉をジャズ・スタンダードとして定着させたように、ジャズは一般的な有名曲をインプロヴィゼーションの土台にしてきました。
そういう流れの一環として今回、日本のアニメ音楽を取り上げたということがあります」
引用「CD Journal」インタビュー
「インプロビゼーション(improvisation)」とは、即興演奏のことだ。
ジャズで「即興演奏」といえば、「アドリブ」を思い浮かべる人も多いと思う。
だが、「アドリブ」と「インプロビゼーション」は、厳密には同じではない。
アドリブはあくまで原曲のコード進行を元に、音楽理論的に展開可能なコードに基づいて行われる。
一方、インプロビゼーションは、原曲のコード進行にとらわれずに自由に演奏する、より創造性の高い演奏スタイルだ。
すなわち、
アドリブ:原曲のアレンジ
とすれば、
インプロビゼーション:原曲にヒントを得て自由に創作した即興演奏
といえる。
もちろん、完全な即興演奏といっても、原曲とまったく関係のない完全オリジナルの曲を演奏するのではない。
いうまでもなく、原曲のもつ雰囲気を壊さない程度に演奏するという、暗黙の了解がある。
実際、この曲は、冒頭こそ、おなじみの「君をのせて」のフレーズだが、開始1分あたりから、ジョバンニ・ミラバッシ特有のスイング感あふれる即興演奏が目立つようになる。
自由な即興によるノリノリのピアノソロは、どことなくキース・ジャレットの名演奏を彷彿とさせ、聴いていて
「あの原曲から、こんなジャズ・アレンジが可能なのか!」
と驚くことうけあいだ。
というわけで、天才ジャズ・ピアニストが演奏する「君をのせて」を存分に堪能してほしい。
【2曲目】人生のメリーゴーランド
2曲目は、同じくスタジオ・ジブリの名作「ハウルの動く城」のテーマ曲だ。
映画では、ソフィーが18歳から90歳のおばあちゃんまで、それぞれのシーンで表情が変わっていく。
それゆえ、作曲家の久石譲によると、メインとなるテーマ曲を一曲作り、そのバリエーションを中心にサウンドトラックを構成することによって、映画に統一性をもたせようと考えた宮崎駿監督の要望から生まれた曲だそうだ。
参考

実は、ジョバンニ・ミラバッシは、2005年にリリースされたアルバム「Prima O Poi」において、「Howl’s Moving Castle(ハウルの動く城)」をレコーディングしている。
Prima O Poi
このときの経緯について、ジョバンニ・ミラバッシは次のように語っている。
「『Prima O Poi』のレコーディングを控えて、気分転換のために行きつけの映画館に足を運んだところ、ちょうど封切られたばかりの『ハウルの動く城』が上映されていました。
そして映画を観たところ、たちまち音楽が気に入って、レコーディングの時にもし5分余裕があったら、この曲を吹き込みたい、と申し出たのです」
引用BARKS JAPAN MUSIC NETWORK インタビュー
イタリアで「ハウルの動く城」が公開された直後にレコーディングしたというのだから、ジョバンニ・ミラバッシの反応の早さには驚くべきものがある。
原曲は、どことなく懐かしさを覚えるメランコリックな曲調のメロディが美しいワルツだが、ジョバンニ・ミラバッシの曲は、いきなりロマンチックで幻想的なインプロビゼーションから始まる。
だが、このオープニングがあまりにも素晴らしい出来なのだ!
まるで、最愛の女性に語りかけるような優しいピアノの音色に、思わずうっとり聞き惚れてしまうほどだ。
そして、1分20秒経過した頃、「人生のメリーゴーランド」のおなじみのテーマ曲が始まる。
だが、その曲は、しっとりと落ち着いた大人のジャズに仕上がっており、上品なバーで一人グラスを傾けながら、黙ってじっくり聴き入りたくなるような曲だ。
ミラバッシの没入感あふれる演奏を聴いていると、映画の数々の名シーンがさながら走馬燈のように脳裏に浮かんできて、
気がついたらなぜか
目に涙があふれてしまう
そんな不思議な曲をぜひ堪能してほしい。
【3曲目】クラッチ
3曲目は、劇場版「COWBOY BEBOP 天国の扉」のクラッチだ。
菅野よう子作曲による原曲は、デトロイト生まれのサックス奏者、ケニー・ギャレットの「3rd Quadrant」を彷彿とさせるような、疾走感あふれるトランペットが印象的な曲だ。
「天国への扉」では、スパイクのモップを使った格闘シーンで使用される。
ちなみに、菅野よう子は、自ら「大のジャズ嫌い」であることを周囲に公言してはばからないのにもかかわらず、なぜか優れたジャズ曲を作曲してしまうという、不思議な作曲家だ。
ところで、ジョバンニ・ミラバッシがガチのアニメオタクであるのは、この選曲からも明らかだ。
アニメをちょっとかじった程度のにわかオタクに、こういう選曲はできない。
なぜなら、アニメをちょっとかじった程度の人間なら、おそらく全曲ジブリの曲だけで固めるか、「カウボーイ・ビバップ」から1曲選ぶにしても、テレビシリーズの最も有名なオープニングテーマである「Tank!」を選ぶだろうからだ。
アニメオタク歴40年以上のガチのアニメオタクだからこそ、こういう渋い選曲ができるのだろう。
そういう意味において、ジョバンニ・ミラバッシは、
日本人以上に
ガチのアニメオタク
といえる。
ところで、「アニメッシ」のクラッチを聴いたとき、原曲よりも少しスローテンポだ。
だが、原曲のもつノリノリでリズミカルな曲調がピアノでうまく再現されており、おしゃれな感じのピアノジャズに仕上がっている。
また、若干ラテン系のノリのピアノのリズムは、スイング感にあふれ、
思わず身体を揺らしたく
なるほどの名曲
といえるだろう。
【4曲目】炎のたからもの
4曲目は、「ルパン三世カリオストロの城」のテーマ曲「炎のたからもの」だ。
原曲は、「ルパン三世」2ndシリーズ以降の作曲家にして、ジャズ・ピアニストの大野雄二の名曲だ。
「アニメッシ」の「炎のたからもの」は、初めのうちは、原曲のリズムにかなり忠実な作曲となっている。
だが、2分を経過した頃から、ジョバンニ・ミラバッシのインプロビゼーションが始まる。
しめやかな小雨のような美しいピアノの音色は、原曲の旋律のもつ美しさを見事に再現している。
原曲の素晴らしさももちろんあるが、ミラバッシの即興的な曲調の変則的な変化により、
いつまで聴いていても
飽きの来ない名曲
といえるだろう。
【5曲目】旅路(夢中飛行)
5曲目は、スタジオジブリのアニメ映画「風立ちぬ」の「旅路(夢中飛行)」だ。
ジョバンニ・ミラバッシ自身、映画館で「風立ちぬ」を観たことから、この曲を入れたのだろう。
「アニメッシ」では、原曲の美しいメロディを大変リズム感のある曲に仕上げており、原曲のもつ懐かしくも哀しい旋律が、おしゃれで上品に感じにまとまっている。
しかしながら、ところどころミステリアスでメロディアスな感じになっており、聴く者に新鮮な気分を与える。
この曲を聴いていて、往年のニュー・ミュージックがもつドラマチックな曲調を思い出したのは、私だけだろうか。
原曲と聞き比べてみると、
原曲との変化の違い
が大変面白い曲
といえる。
【6曲目】愉快な音楽
6曲目は、アニメ映画「ホーホケキョとなりの山田君」の「愉快な音楽」だ。
「愉快な音楽」は、その名のとおり、とても明るくリズミカルな楽しい曲だ。
原曲は、シンガーソングライターの矢野顕子(やの あきこ)だ。
矢野顕子は「となりの山田君」の主題歌と藤原先生の声を担当している。
「となりの山田君」は、20億円もの製作費用をかけた高畑勲監督の渾身の力作であり、数々の優れた作画が欧米でも高く評価されて話題になった。
だが、これらの高い評判にもかかわらず、興行不振に陥ったという、ジブリ作品の中でも特異な作品だ。
それゆえ、悲しいことに、昨今のジブリ作品のアニメ曲のカバーにおいて、「となりの山田君」を無視する作曲家も多い。
だが、そんな状況を知ってか知らずか、ジョバンニ・ミラバッシが、あえてこの作品を選んだのは興味深い。
しかも、ジョバンニ・ミラバッシは、原曲同様に、ノリノリで楽しいジャズ・ピアノにしてしまったのだ。
そういう意味で、この曲は
ジブリ愛にあふれた
ミラバッシならではの選曲
といえるだろう。
【7曲目】風の伝説
7曲目は、「風の谷のナウシカ」のメインテーマ曲「風の伝説」だ。
原曲については、もはや語るまでもないだろう。
「アニメッシ」でアレンジされた「風の伝説」のゆったりと語りかけるように流れる旋律は、それだけで聴く者をジャズ・ピアノの世界に引き込ませる。
そして、美しいピアノの音色が「ナウシカ」の旋律をゆったりと奏でていくさまは圧倒的だ。
おしゃれなお店の
BGMに流しても
全く違和感のない一曲
といえるだろう。
【8曲目】グラヴィティ
8曲目は、ボンズ制作のオリジナルアニメ作品「ウルフズ・レイン」の「グラヴィティ」だ。
原曲は、菅野よう子作曲、坂本真綾が歌うエンディングテーマだ。
「ウルフズ・レイン」は、寒冷化が進んで荒廃した世界を舞台に、4匹の狼の若者がどこにあるとも知れない狼だけに許された「楽園」を目指し、長く過酷な旅に出るというストーリーだ。
菅野よう子・坂本真綾のスーパーコンビが担当しているだけあって、一度聴いたら忘れないほどのアニメ史上に残る超絶クオリティの神曲だ。
gravity (WOLF’S RAIN EDテーマ)
「アニメッシ」のジャズアレンジでは、現代音楽を彷彿とさせるような、内省的な旋律のピアノ・ソロのインプロビゼーションから始まる。
そして、少しずつ原曲の馴染みのある旋律が織り込まれていく手法がとても新鮮だ。
なお、この曲について、ジョバンニ・ミラバッシは、次のように語っている。
「最初のインプロヴィゼーションの部分は、原曲の構成に基づいて、対位法的な手法を取り入れて弾いています。
もともとのアイディアとしては、ふつうのジャズのようにテーマを提示してからインプロヴィゼーションというのではなく、原曲から離れたところからスタートして、霧の中を進んでいくと目標がみえてくるような効果を狙いました。
気に入ってくれたのなら、やり方がうまくいきましたね」
引用「CD Journal」インタビュー
ミラバッシが語るように、1分37秒を経過した頃になって、あたかも霧が晴れたかのように、聞き慣れた原曲のメロディが現れる。
まさしくジョバンニ・ミラバッシらしい、
心憎い演出
だ。
落ち着いてじっくりと聞きたい一曲だ。
【9曲目】銀色の髪のアギトBGM
9曲目は、知る人ぞ知る「銀色の髪のアギト」のBGMだ。
「銀色の髪のアギト」(以下、アギト)はGONZOにより、2006年に公開された長編劇場アニメだ。
制作費が少なく、大々的に宣伝もしていなかったため、「アギト」の存在自体知らない人も多いかもしれない。
それゆえ、簡単な紹介をしておこう。
「アギト」は、300年後の未来、遺伝子操作の失敗によって意思を持つようになった森が人を襲うようになった世界を舞台にしたSFアニメだ。
ここで、
「森が人を襲う?
その設定、どこかで
聞いたことのある
ような設定だな?」
このように思った人は鋭い。
そう。
「風の谷のナウシカ」の設定と同じ既視感あふれる設定なのだ!
それもそのはず、「アギト」の原案は、今は亡きアニメ監督の飯田馬之介であり、「風の谷のナウシカ」の動画制作や、「天空の城ラピュタ」で演出助手をつとめていた人物なのだ。
「ナウシカ」の王蟲が「アギト」の森になったと考えれば分かりやすいかもしれない。
「遺伝子操作」というアイデアも、原作の「ナウシカ」を知る者なら、既視感を感じるだろう。
それゆえ、
「ナウシカの二番煎じ」
「設定に新鮮味がない」
など、目の肥えた宮崎アニメファンからの「アギト」の評価は散々だった。
ちなみに、アニメ映画「君の名は。」で高い評価を受けた新海誠監督も、かつて「星を追う子ども」でジブリ愛にあふれたオマージュ的な作品を作って、目の肥えた宮崎アニメファンから散々叩かれている。
それゆえ、いくら作画クオリティが高いとはいえ、ジブリファンからの批判が多い「アギト」を曲目に入れるのは、日本人の作曲家なら、誰でも躊躇するのではないだろうか?
だが、ジブリアニメをこよなく愛するジョバンニ・ミラバッシは、そのようなジブリファンからの批判をおそれなかった。
彼は、目の肥えたアニメファンの一方的なネガティブ評価など、気にもかけない陽気なイタリア・オタクなのだ。
ジョバンニ・ミラバッシ
「は?
ジブリアニメの
二番煎じだって?
それがどうした?
オレがいいと思ったら
いいんだよ!
オマエラの評価なんて
いちいち気にしてたら、
オレの大好きなアニメ曲が
紹介できねーだろ!」
このように、他人の評価を気にしすぎるあまり、自分の本当の思いを無理に隠して他人に迎合しつづけるキョロ充のような生き方ではなく、自分の心に素直に生きるジョバンニ・ミラバッシは、まさしく
真のアニメオタク
といえるのかもしれない。
ジョバンニ・ミラバッシの自由な生き方を見習いたいものだ!
ちなみに、「アギト」のオープニングテーマ「調和 oto〜with reflection〜」は、女性シンガーソングライター・ボーカリストのKOKIAが担当している。
作品の評価とは裏腹に、主題歌のほうは、文句なく素晴らしい出来だ。
東洋的かつ神秘的な主題歌は、NHKスペシャルで使用されたとしても少しも不思議はないほどの圧倒的なクオリティの高さだ。
ジョバンニ・ミラバッシがこの曲に惚れるのも当然だろう。
「アニメッシ」では、哀しげなチェロの旋律が、原曲の東洋的かつ神秘的な雰囲気をドラマチックに再現している。
チェロを担当しているのは、ドラマーのピエール・フランソワ・デフォーだ。
彼は、ボルドーのオペラ劇場のチェロ奏者であり、この曲では、東洋の楽器のようにチェロの音色が響くように工夫したそうだ。
ピアノ曲でこれほどの感動を味わえる曲も少ないかもしれない。
とにかく
聴きごたえのある一曲
だ。
【10曲目】さくらんぼの実る頃
10曲目は、スタジオジブリのアニメ映画「紅の豚」で挿入歌として使用された「さくらんぼの実る頃」だ。
「さくらんぼの実る歌」は、1866年に発表されたフランスのシャンソン(歌曲)で、サクランボの実る時期が短いことから、はかない恋と失恋の悲しみを歌った曲だ。
だが、後に政府軍の弾圧により、2ヶ月という短命で終わったパリ・コミューン(パリ市の革命自治政府)と、激しい弾圧により失われた多くの革命家達の夢を、はかない恋に例えて、パリ市民がこの曲をさかんに歌ったことから、フランスのシャンソンを代表する曲として知られるようになったという。
「紅の豚」では、加藤登紀子が演じるマダム・ジーナがフランス語で歌うシーンに使われており、かつてマダム・ジーナに恋をして散っていった空の男達への哀愁を感じさせる名曲だ。
ジョバンニ・ミラバッシは、もともと反戦歌や革命歌をソロ・ピアノで演奏したアルバム「AVANTI」が評価されて、フランスでデビューを果たした。
それゆえ、革命の理念に燃えて散っていたフランスの革命家達を追悼する「さくらんぼの実る歌」を最後の曲として選んだことは、ミラバッシなりの流儀かもしれない。
そして、革命歌をピアノ・ジャズとして現代に蘇らせるジョバンニ・ミラバッシの情熱的な演奏は、やはり見事としかいいようがない。
まさしく、
アルバムの最後を飾る
のにふさわしい名曲
といえるだろう。
【最後に】日本のアニメ音楽がジャズ・スタンダードになる日
以上、「アニメッシ」について紹介した。
ところで、この「アニメッシ」だが、ジョバンニ・ミラバッシによると、嬉しいことに、
2020年までに
「アニメッシ」の第2弾を
制作する準備ができている
そうだ。
参考
https://www.barks.jp/news/?id=1000114374&page=2
ちなみに、宮崎駿監督は、ジョバンニ・ミラバッシの大ファンであり、ミラバッシのCDをすべて持っているそうだ。
実際、「アニメッシ」のリリースに合わせて、彼はジャパン・ツアー2015を行っているが、3月13日に東京・武蔵野スイングホールで行なわれた公演には、宮崎駿監督の姿もあったそうだ。
参考
http://www.cdjournal.com/main/cdjpush/giovanni-mirabassi/1000001068
このように、ジョバンニ・ミラバッシのような海外で高い評価を受けた本物のジャズ・ピアニストが、日本アニメ曲を題材とした作品をリリースするのは、同じアニメ曲をこよなく愛する者にとって、歓迎すべき流れであるといえるだろう。
実は、「アニメッシ」は、他のレコード会社との契約の都合上、ヨーロッパでの発売は未定だそうだが、ジョバンニ・ミラバッシのライブがラジオで生中継された途端、ファンやメディア関係者から反響があり、
「演奏した曲が入ったCDはないのか?」
という多くの問い合わせがあったそうだ。
もしかすると、かつてビル・エヴァンスやマイルス・デイヴィスがディズニー・アニメの音楽「いつか王子様が」をカバーしてジャズ・スタンダードとして定着させたように、
日本のアニメの音楽が
ジャズ・スタンダート
として定着するときが来る
のかもしれない。
というわけで、諸君も、欧州ジャズ・ピアノ界の貴公子にして、
本物のアニメオタク
が作曲した本物の
アニメ・ジャズ曲
を聴いて、充実したオタクライフを存分に満喫してほしい。
オタクパパより愛を込めて!
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