親愛なる読者諸君!
オタクパパだ!
今回は、
大人のための
アニメジャズ入門
だ。
「そろそろいい年に
なってきたし
アニソンを聴くのも
ちょっと辛く
なってきたかも・・・」
「かといって、いきなり
ジャズを聞くのも
どんな曲がいいか
よく分からないし
敷居が高いな・・・」
という人のために、本入門ではこれまで
1000曲以上もの
アニメ関連のジャズ曲
を聴いてきた私が、大人向けのアニメ関連のジャズの名曲をひたすら紹介する。
なお、本入門では、さまざまなアニメ関連のジャズアルバムを取り上げ、その曲の魅力についてはもちろんのこと、作曲家やバンドメンバーの経歴、原作の魅力やその曲が作曲されるに至った経緯などについて、
昭和・平成のアニメ
を知り尽くした
中年オタクならではの
こだわりの視点
で紹介するつもりだ。
というわけで、今回は、有名なガンダムシリーズのスピンオフ作品「機動戦士ガンダム サンダーボルト」において、
ガンダム × フリージャズ
という、異色の組み合わせが生まれた経緯について紹介したい。
【2019/06/25 追記】
「機動戦士ガンダム サンダーボルト」とは
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最初に、本記事でとりあげる「機動戦士ガンダム サンダーボルト」(以下、「サンダーボルト」)について知らない人もいると思うので、簡単に紹介しておこう。
「サンダーボルト」は、「機動戦士ガンダム」(以下、「ファーストガンダム」)シリーズのスピンオフ作品だ。
「ファーストガンダム」は、ご存じの方も多いと思うが、1979年に放送され、空前絶後のガンプラ・ブームを生み出したロボットアニメの古典ともいえる名作だ。
なお、ファーストガンダムは、全43話放映されている。
それゆえ、ファーストガンダムについて手っ取り早く知りたいという人は、要点を短くまとめた劇場版を観ることをお勧めする。
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ところで、ファーストガンダムの大ヒット以来、数多くのガンダムシリーズの続編が作られてきた。
それらのガンダムシリーズのスピンオフ作品として、2012年から「ビッグコミックスペリオール」において、太田垣康男(おおたがき やすお)によって連載されている漫画作品およびそのアニメ化作品が、今回紹介する「サンダーボルト」だ。
なお、「サンダーボルト」については、以下の紹介記事に詳しく書いたので、興味のある方は参照してほしい。
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ガンダムとフリージャズとの組み合わせが意外といける!
ところで、アニメ版のサンダーボルトにおいて、もっとも衝撃的なのが、
戦闘シーンで
容赦なく流れる
フリー・ジャズ
だ。
サンダーボルトにおける主人公の一人、地球連邦宇宙軍のイオ・フレミングは、ガンダムを操縦するエースパイロットだ。
イオは、ガンダムのコクピット内にドラムスティックを持ち込んでリズムを刻み、戦闘の最中でもコクピットでジャズを大音量で鳴らすほどの大のジャズ好きだ。
だが、イオが好んで聴くジャズは、普通のジャズではない。
一度聴いたら忘れることができないほどインパクトの強い、
本格的なフリー・ジャズ
なのだ!
(↓)下の画像は、戦闘中にジャズを聴くイオを描いた1コマだ。ピアノを演奏しているのは、オスカー・ピーターソンだろうか? ピーターソン自身はフリー・ジャズとは無関係だったように思うが、「サンダーボルト宙域・・・ここにはフリージャズがお似合いだぜ。」というイオの言葉から「ガンダム×フリー・ジャズ」という異色の組み合わせが誕生した。そういう意味でも、「サンダーボルト」の曲を決定づけた1コマといえるだろう。
引用「機動戦士ガンダム サンダーボルト」太田垣康雄
ところで、
ガンダムとフリージャズ
という異次元の組み合わせが、これだけマッチングするというのは、いったい誰が想像できただろうか?
だが、ガンダムとフリージャズとの組み合わせは、さながら豆腐とヨーグルトとの組み合わせと同じくらい、一見ありえないと思う反面、実際に味わってみたら意外といける組み合わせなのだ!
このように、「サンダーボルト」は、音楽面においても、従来のガンダムシリーズ、いや
全世界のアニメ
の常識を覆した
といっても過言ではないだろう。
まさしく、
史上初の
フリー・ジャズ・アニメ
それが「サンダーボルト」なのだ!
「サンダーボルト」の作曲家・菊地成孔の魅力に迫る
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ところで、アニメ版「サンダーボルト」の作曲を担当したのは、
菊地成孔(きくち なるよし)
だ。
ジャズ界の鬼才にして異端児・菊地成孔
菊地成孔氏の名前は、ジャズに詳しくない一般の人には、あまり馴染みが薄いかもしれない。
菊地成孔とは、一体何者なのだろうか?
「子供向けのアニメの曲を
作曲する程度だから
どうせたいした作曲家じゃ
ないんじゃないの?」
そのように考えるとしたら、
あなたの常識は
昭和の時代で止まっている
といっても過言ではないだろう。
ここで、ジャズ界における菊池成孔氏の評価をかいつまんで紹介すると、次のような感じだ。
「時代をリードする鬼才」
「現代のカリスマ」
「疾走する天才」
これらの言葉を見ても、彼がただ者ではないことが明らかだろう。
それだけではない!
菊地成孔は、ジャズ・ミュージシャンとしての評価も一流だが、なんと
東京大学教養学部
や
国立音楽大学
において、非常勤講師として教鞭をとり、「ジャズ〜20世紀アメリカ史」、「マイルス・デイヴィス研究」などの講義録を出版し、ジャズ理論史を教えるほどの理論派でもあるのだ!
実際、菊地成孔氏の東大でのジャズ講義録は、その斬新な切り口や分析が大変面白く、そのクオリティの高さは、
ジャズ・ミュージシャン
必読の書
として定評が高い。
私自身も実際に読んでみたが、その語り口が大変に面白く、当時の教室での熱意が伝わってくる素晴らしい講義だった。
その面白さはまさしく
「東大ジャズ白熱教室」
といっても過言ではないだろう。
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このように、菊地成孔氏は、
実践・理論の両面に
通じるジャズ界の天才
なのだ!
参考 菊地成孔 PROFILE
菊地成孔が「サンダーボルト」の作曲を依頼されたそもそもの経緯
それではなぜ、ジャズ界において現代のカリスマとも呼ばれ、東大でジャズ講義を行うほどの天才ジャズ・ミュージシャンが、アニメ作品、しかもガンダムの作曲を手がけたのだろうか。
菊地氏がアニメ作品の作曲を手がけたのは、「サンダーボルト」が最初ではない。
実は、それ以前にも、「ルパン三世」のスピンオフシリーズである
「LUPIN the Third
〜峰不二子という女〜」
の作曲を手がけていた。
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ところで、「ルパン三世」の曲は、作曲家の大野雄二氏がプロのジャズ・ピアニストであっただけに、もともとジャズ色の強い曲が多い。
そのため、ジャズ・ミュージシャンである菊池成孔氏に「峰不二子という女」の作曲依頼が来たのも、当然の流れともいえるだろう。
実際、「峰不二子という女」のBGMは、峰不二子のミステリアスな魅力が見事なまでに曲に表現されており、実に素晴らしい仕上がりだった。
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だが、もともとジャズと親和性の高いルパンシリーズと違い、「ガンダムシリーズでジャズ」という発想には、違和感がある人も多いのではないだろうか?
実際、「サンダーボルト」のアニメ化を手がけた松尾衡(まつお こう)監督と、サンライズの小形尚弘(おがた なおひろ)プロデューサー自身も、次のガンダムの曲がジャズということを知り、めちゃくちゃ焦ったそうだ。
「え?
次のガンダムがジャズ?
やばい!
ジャズとか全然
わかんねーよ!
ジャズに詳しい人って
やたらマウントしてきて
うるさそうだし
下手に手を出したら
いろいろ突っこまれて
絶対火傷するって!
マジでやばいよっ!!」
このように、松尾監督と小形プロデューサーは焦りまくったそうだ。
そして、さんざん悩んだあげく、
「やっぱり
作曲を依頼するなら
ジャズに詳しい人達から
絶対に突っこまれず
逆に認めてもらえるような
レベルの高い曲を作れる
人に依頼しないと
あとあと大変だな」
と考え、「峰不二子という女」の作曲で、すでに高い評価を受けていた菊地成孔氏に依頼することにしたそうだ。
とはいえ、依頼する相手は、東大でジャズの講師を務めたこともあるジャズ界の天才だ。
それほどの天才が、国民的アニメ「ガンダム」シリーズのスピンオフとはいえ、はたして「サンダーボルト」の作曲を引き受けてくれるのだろうか?
松尾監督と小形プロデューサーは、「サンダーボルト」の作曲を依頼しても、菊地氏から無碍に断られるのではないかと始終不安だったそうだ。
ちなみに、1963年生まれの菊地氏のアニメ視聴歴は、
「ど根性ガエル」
(1972-1974)
で完全終了
しており、それ以来、アニメや漫画はあまり馴染みがなかったそうだ。
また、「ガンダム」シリーズも一度も見たことがなく、名前しか知らなかったという。
そのため、「サンダーボルト」の作曲依頼を受けたとき、菊地氏自身、
冗談と思って
2度も聞き返した
そうだ。
実際、松尾監督と小形プロデューサーが「サンダーボルト」の説明のために、「ガンダム」や「ザク」という単語を出すたびに、菊地氏の反応は、
「は? ガンダム?
ザク?
なに言ってんだ?
コイツら」
という感じだったそうだ。
そのため、1回目の打ち合わせの後、小形プロデューサーは、
「これは多分
断られるだろうなあ……」
と絶望していたそうだ。
だが、どういうわけか、菊地氏は「サンダーボルト」の作曲を快く引き受けてくれて、とても驚いたそうだ。
また、次に打ち合わせをしたとき、なんと菊池氏自身、「サンダーボルト」の魅力に引き込まれたのか、原作を読み込んできて、小形プロデューサーよりも詳しくなっていたという。
このように「ど根性ガエル」でアニメ視聴歴が完全終了していたような普通の大人でさえも、思わず原作を読破してしまうほどの魅力をもったのが「サンダーボルト」の恐ろしさといえるだろう。
ジャズ界の異端児・菊地成孔のユニークな提案
ところで、菊地氏は「サンダーボルト」の作曲を引き受けるに当たって、実にユニークな提案をしている。
菊地氏が注目したのは、イラク戦争の際に、実際に兵士達がヘヴィメタルやヒップホップなど、自分のお気に入りの曲を聴きながら戦っていたという事実だ。
この事実を踏まえて、菊地氏は監督に、とても粋な提案をした。
その提案とは、
2人の主人公
イオ・フレミングと
ダリル・ローレンツが
聴いているiPodの
中身を推測して
そのプレイリスト
を作ろう
というものだった。
それゆえ、「サンダーボルト」の曲は、一般的なアニメ曲のようなありきたりな劇伴(キャラクターが登場すると、そのキャラのテーマ曲として劇中で流れる音楽)ではなく、
2人の主人公の
お気に入りの曲の
プレイリスト
という、実にユニークな位置づけになっている。
実際、「サンダーボルト」のサントラは、前半部分が、イオ・フレミングが好むフリー・ジャズから構成され、後半部分が、ダリル・ローレンツが好むオールディーズから構成されるという異色の構成となっている。
このような経緯から、「サンダーボルト」では、
登場人物達が
その場で聴いている音楽
が、曲作りのコンセプトとなっている。
その一方で、劇伴としてのBGMはあえて最小限に抑えられている。
そのため、視聴者は、音楽を通じて戦場にいる登場人物達のリアルな感覚を追体験できるのだ。
そういう意味で、まさしく
ジャズ界の異端児
ならではの
ユニークな提案
といえるだろう。
Rolling Stone Japan、http://rollingstonejapan.com/articles/detail/26155/1/1/1(リンク切れ)
以上、ガンダムでフリージャズという異色の組み合わせが生まれた経緯について紹介した。
なお、「サンダーボルト」の曲が、超一流のジャズメンバーが結集して作られた、従来のアニメ曲の常識をくつがえす「本気のジャズ」であることについて、以下の記事に書いた。
[st-card id=10970 label=”” name=”” bgcolor=”” color=”” readmore=”on”]
というわけで、諸君も、
アニメ曲 = 子供向け
という、昭和の親父的な古くさい価値観を捨てて、
大人向けのガンダム
フリージャズ
を存分に堪能してほしい!
オタクパパより愛を込めて!
[kattene] { “image”: “https://ws-fe.amazon-adsystem.com/widgets/q?_encoding=UTF8&MarketPlace=JP&ASIN=B01EK7BHXW&ServiceVersion=20070822&ID=AsinImage&WS=1&Format=_SL250_&tag=otakupapa-22”, “title”: “オリジナル・サウンドトラック「機動戦士ガンダム サンダーボルト」/菊地成孔”, “description”: “菊地成孔、ヴィレッジレコーズ”, “sites”: [ { “color”: “orange”, “url”: “https://amzn.to/2FuYhhS”, “label”: “Amazon”, “main”: “true” } ] } [/kattene]
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